当社の前身である簡易生命保険が生まれた1916年当時、生命保険は富裕層の方々を除き加入が難しいものでした。それを小口化し、郵便局という身近なネットワークを通じて基礎的な保障を広めたいという想いで、創業から100年以上、当社は国民生活の安定に貢献してまいりました。私は、企業の存在価値は「世の中のお役に立ち、お客さまから感謝されること」、この一点だと考えています。当社で言えば、「お客さまから信頼され、選ばれ続けることで、お客さまの人生を保険の力でお守りする」という社会的使命(パーパス)を全うすることであり、当社では、こうした事業活動そのものが、持続可能な社会の実現に貢献するための取り組みであると位置づけています。
日本郵政グループは、長い歴史の中で、公共性の高い事業グループとして、生まれる前から亡くなった後までトータルでお客さまの人生に寄り添い、それぞれの節目で必要な金融、物流などのサービスをご提供するという事業コンセプトを一貫して維持してきました。郵便局というブランドは、各地域で大きな信頼感・安心感を得ています。当社の最大の特徴は、その「郵便局の保険」であるということです。いざというときの支えとなる保険というサービスだからこそ、地域の皆さまの身近な存在である郵便局を通じて提供することは、大きな価値があると考えています。現在、約2,000万件のご契約をお預かりしていますが、今後もあらゆる世代のニーズに応じた保険商品やサービスの提供を、郵便局と共に提供してまいります。
当社は、巨額の運用資産を有する機関投資家という側面もあります。ユニバーサルオーナー(投資額が大きく、資本市場全体に幅広く分散して運用する長期投資家)として、経済・社会全体に与える影響は大きく、その責任とともに、社会をよい方向に変えられるチャンスが十分にあると考えています。例えば、当社ではインパクト投資(財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを生み出すことを意図する投資活動)の推進に向けたプロジェクトを立ち上げるとともに、資産運用における産学連携として、学校法人と協力し、アカデミアの研究成果を活用したスタートアップへの資金供給に向けた取り組みなども進めており、社会課題の解決やイノベーション創出による、より良い未来社会の実現に努めています。また、国内外の各種提携関係を基にした協業の拡大など、新しい取り組みを進めていくことで、当社の成長につなげるとともに、当社が社会に価値を提供できるフィールドを広げていきたいと考えています。
「会社は一つ一つの現場の相似形であり、真実は現場にある」というのが、郵政で40年仕事をしてきた私の基本的な考え方です。私の原点は、29歳で職員数106人の郵便局長になった時の経験にあります。毎日のように問題が起き、そのたびに現場の職員さんたちの協力を得て、苦難を乗り切りました。2003年に「日本郵政公社スタートアップ委員会」の委員長となった際にも、全国の社員の声を集め、「現場からの改革」を進めました。かんぽ生命の社長に就任した現在でも、定期的にフロントラインに足を運んでいます。社員が感じる不安や課題を直接耳にし、迅速かつ丁寧に解決策を講じていくことで、社員が明るく元気に、自信と誇りをもって仕事ができるような会社を目指しています。そして、そうした会社こそが、お客さまや社会のお役に立てる存在になると確信しています。
当社では、このような当社の持続的な成長と社会課題の解決に向けた取り組みを、マテリアリティとして整理し、掲げています。このマテリアリティは、「お客さまの人生を保険の力でお守りする」という社会的使命(パーパス)を果たすためのものです。今後も、マテリアリティの取り組みを一層推進していくことで、お客さまや株主の皆さま、社員や地域の皆さまなど、すべてのステークホルダーから選ばれる会社を目指してまいります。
サステナビリティ