保険契約者等の保護の取組み
審査結果の概要
2012年度審査手続終了分
【86】傷害保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、平成20年7月30日に、バイクで走行中に車と接触して転倒し、その後、身体に障害を残したことから、傷害保険金の支払請求をしたところ、会社から、身体障害等級表第5級に該当するとして傷害保険金の支払いを受けたが、被保険者の身体障害の状態は同表第3級に該当するものであり、納得できない。よって、同表第3級の傷害保険金を支払うべきである。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によると、被保険者は、頭部のCTやMRIにおいて、外傷性くも膜下出血が認められており、その部位は小脳を含めた脳の広範囲に及ぶ四丘体叢やテントであったとされているものの、日常生活動作の排尿・排便、食事、衣服の着脱は自立している等、被保険者の身体障害の状態は、同表第3級の44に該当するとまでは認めることができない。また、被保険者は、平成20年10月29日に、病院を退院した時点では身体状態が相当に回復していたところ、その後、身体状態が悪化している。その原因については必ずしも明らかではないが、被保険者には脳梗塞や糖尿病の罹病歴、頸椎の加齢的変化があることを考慮すると、被保険者の身体障害の原因については、これらを除外して考えることはできないものであり、外傷性くも膜下出血によるものか否か必ずしも明らかではない。 したがって、被保険者の身体障害の状態は、等級表第3級の傷害保険金を支払うべきものとは認められないことから、請求人の請求は認められない。 |
【87】傷害保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、平成22年8月7日に、事務所の倉庫内で電線の整理中、左肩より約10cm下部に激痛が生じ、左肩関節等に運動障害を残したとして、傷害保険金の支払請求をしたところ、会社から、検査で腱板断裂等の器質的病変が認められていない等として、その支払いを謝絶されたが納得できない。よって、傷害保険金の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によると、被保険者は、本件事故直後に病院で受診しておらず、当時の左肩等の状態に係る医師の所見やMRI画像が存在しないほか、本件事故から約3週間後に「頸肩腕症候群」及び「肩関節周囲炎」と、本件事故から約8か月後に「左肩腱板損傷」とそれぞれ診断されているものの、いずれも本件事故により傷害を受けたことを診断したものと認めることはできない。被保険者は、本件事故当時82歳と高齢であり、X線検査の結果、頸椎に大きな変形性変化が認められていること等を考慮すると、左肩の痛みや左腕の挙上困難等は被保険者の身体的素因によるところが大きいものと認めるのが相当である。 したがって、被保険者は、不慮の事故等により受けた傷害を直接の原因として、当該身体障害の状態になったと認めることはできず、傷害保険金を支払うべきものとは認められないことから、請求人の請求は認められない。 |
【88】死亡保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
保険契約者兼被保険者をA(請求人の父)、保険金受取人を請求人とする保険契約について、Aの世話人を名乗るBにより保険金受取人を請求人からBへ変更する手続(本件変更手続き)がされているが、その手続に使用された書類の筆跡や修正箇所等に不審な点があること等から納得できない。よって、正当な保険金受取人である請求人に対して本件保険契約に係る死亡保険金を支払うことを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、本件変更手続きに際して提出された書類のうち、委任状等における保険契約者兼被保険者であるAの自署すべき欄の筆跡は、保険契約申込書の保険契約者欄及び被保険者欄の筆跡や自筆証書遺言の筆跡(いずれもAが自署すべきもの)と同じものと認められ、その他関係者の供述等からも、本件変更手続きは保険契約者兼被保険者の意思に基づき有効に行われたものと認められる。 したがって、本件保険契約の死亡保険金受取人は請求人であるとは認められないことから、請求人の請求は認められない。 |
【89】契約の無効確認
ご請求の 内容 |
請求人の父であるA(当時74歳)は、14年以上生存しなければ払込保険料以上の年金を受け取ることができない即時終身年金保険の保険契約(本件保険契約)を締結しているが、Aは当時、病を患っていたのであり、また、難聴気味であったAが本件保険契約の内容を理解、納得して契約したとは到底思えない。よって、本件保険契約は無効であることの確認を求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によると、受理職員は、本件保険契約の申込みの勧誘に際し、リーフレットを用いて保険料の払込みや年金の支払等について説明を行った上、年金受取人が死亡した場合には保証期間経過後の年金は支払われず、総額保証がないことを説明していること、当時Aは難聴ぎみではあったものの日常会話には困らない程度であり、Aは、受理職員の説明を理解できる状態にあったこと、Aは本件保険契約に加入後、約9年間にわたり、何らの異議の申出をすることなく年金を受領していること、加入当時、Aの病は既に完治していたこと等が認められることから、Aは、本件保険契約の内容等を理解した上で申込みを行ったものと考えられ、その申込みに際して錯誤があったとは認められない。 したがって、本件保険契約は有効に成立しているものと認められることから、請求人の請求は認められない。 |
【90】契約の無効確認等
ご請求の 内容 |
本件保険契約は、保険契約者の十分な確認や理解を得ないままに、一方的で悪質、強引な手法により成立した契約であること等から、無効であることの確認を求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によると、受理職員は、本件保険契約の申込みの勧誘に際して、保障設計書を用いて、請求人に対し保険金額、保険料額等を説明しており、請求人も加入後約9年間にわたり、何らの異議の申出をすることもなく、保険料の払込みを行い、本件保険契約を継続してきたこと等を考慮すると、請求人は、本件保険契約の保障内容等を理解した上で、その申込みを行ったものと認められ、この申込みに際して錯誤その他の無効原因ないし取消原因となるべき事情は認められない。 したがって、本件保険契約は有効に成立しているものと認められることから、請求人の請求は認められない。 |
【91】契約の無効確認
ご請求の 内容 |
本件保険契約は、保険契約者兼被保険者を請求人とする保険契約であるが、請求人の知らない間に締結された契約であり、本件保険契約の被保険者として同意を行ったこともない。よって、本件保険契約は無効であるから、保険料の全額を自分に返還するよう求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、本件保険契約の申込書の筆跡が請求人本人の筆跡とは異なること等からすると、本件保険契約の申込みは請求人の母親が請求人に無断で行ったものであり、また、申込みに当たり被保険者の同意もなく、更に、請求人は、審査の請求に当たり、本件保険契約の無効を主張しており、これは請求人の母親の無権代理行為に対する追認拒絶の意思表示と認められることから、本件保険契約は無効であると認められる。 この場合、本件保険契約の申込みの当時、国に対し支払われた保険料は不当利得に該当するため、会社はこれを返還すべきこととなるが、返還すべき相手は当該保険料を払い込んだ母親であり、請求人ではない。よって、会社は請求人に対し、本件保険料相当額を返還すべき義務を負うとは認められない。 |
【92】手術保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
請求人は、平成24年3月12日から同月27日まで、左舌白板症の診断の下に入院し、同月14日に左舌部分切除の手術を受けたところ、会社から、本件手術は約款別表第3のいずれの手術にも該当しないとして手術保険金の支払いを謝絶されたが、他社の保険では本件手術に対して手術保険金(20倍)が支払われていること等から、納得できない。よって、手術保険金を支払うことを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、本件手術は左舌を部分的に切除したものであることが認められるので、「29 舌全摘除術」には該当せず、また、被保険者の白板症の最終病理組織診断は「中等度異型(前癌病変)」とされており、これは、将来そこから癌が高頻度に発生する可能性のある病変であり、癌そのものではなく、悪性新生物とは認められないので、本件手術は「88 悪性新生物摘出術」、「90 その他の悪性新生物手術」等の悪性新生物に係る手術にも該当せず、その他別表第3に掲げる手術のいずれにも該当しない。 したがって、本件手術は約款別表第3に掲げる手術のいずれにも該当しないことから、本件手術について手術保険金を支払うべきと認めることはできない。 |
【93】正当権利者への支払の可否
ご請求の 内容 |
本件各保険契約に係る入院保険金等の払渡し(本件払渡し)は、A(請求人らの兄)が、正当権利者であるB(本件各保険契約の被保険者であり、請求人らの母)からの委任を受けずに行ったものであり、無効である。よって、本件各保険金のうち、法定相続分に相当する金額の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
本件払渡しに係る支払請求書を作成したのがAであることに争いがないところ、関係資料等によれば、本件払渡しについては、Bから代理権の授与を受けたAが、書類等を作成して支払請求手続を行った後、Bがかかる保険金を郵便局の窓口で受領するという態様で行われたと認めるのが相当である。 したがって、本件払渡しは有効な支払いであると認められることから、請求人に対して本件払渡しに係る保険金のうち法定相続分に相当する金額を支払うべきとは認められない。 |
【94】過払保険料相当額の損害賠償請求
ご請求の 内容 |
保険契約の申込み時、全期間分の保険料として月額保険料120か月分の1,796,400円を払い込んだところ、当該金額には前納割引が適用されておらず、前納割引後の金額1,671,101円との差額の大半は受理職員によって詐取されたものと思われる。よって、当該差額125,299円の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、本件保険契約の保険料については、申込み時に1か月分の保険料(14,970円)を、平成13年7月から平成13年9月までの間に1か月分ずつ計3か月分の保険料を、平成13年10月11日に残期間分(116か月分)の前納割引保険料(108,19か月分)である1,619,604円をそれぞれ収納したとの履歴がある。また、申込み時に請求人に交付された預り金領収証には、申込み時に受領した金員として1か月分の保険料が記載されていること等が認められる。 したがって、請求人が主張するように、本件保険契約申込み時に月額保険料120か月分の保険料の払い込みがなされた事実はなく、同申込み時に受理職員が受領したのは、1か月分の保険料相当額にとどまるものである。よって、請求人の請求は認められない。 |
【95】傷害保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、昭和60年の外傷により左眼視力低下の障害((1)障害)を、平成5年の外傷により左足指切断の障害((2)障害)を、さらに、平成17年に発症した若年発症アルツハイマーにより日常生活動作の障害等((3)障害)を残したことから、傷害保険金を請求したところ、いずれも傷害保険金の支払要件に該当しないとして、その支払が謝絶されたが納得できない。よって、傷害保険金の支払を求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、(1)障害については、その程度や症状固定の具体的な時期のほか、昭和60年の外傷の状況についても必ずしも明らかでなく、(2)障害については、約款所定の身体障害の状態にいずれにも該当せず、(3)障害については、疾病を直接の原因とするものであることから、当該各身体障害の状態は、不慮の事故等による傷害を直接の原因として約款所定の身体障害の状態になったものとは認められない。 したがって、被保険者の身体障害の状態は、傷害保険金を支払うべきものとは認められないことから、請求人の請求は認められない。 |
【96】入院保険金相当額の損害賠償請求
ご請求の 内容 |
昭和57年に第1種疾病傷害特約(旧特約)付きの養老保険に加入したところ、昭和62年9月1日に、入院保険金の支払要件を緩和(20日以上の入院から5日以上入院に緩和)等した第1種疾病傷害特約(新特約)が販売された際、郵便局からは、旧特約から新特約への切替制度があることの案内がなく、また、平成17年1月の入院保険金請求時にも案内がなかった。その結果、請求人は、新特約への切替えの機会を失い、今回の入院(7日間)について入院保険金の支払いを受けられないこととなった。これは、会社側に、新特約への切替えに係る説明義務違反があったためである。よって、当該入院保険金相当額の損害賠償を求める。 |
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審査結果の 概要 |
特約の切替制度については、昭和62年9月1日から平成5年3月31日までの間実施されていたところ、かかる周知については、当時の簡易生命保険法に基づき官報による公示や郵便局での保険約款の備置きが行われたほか、郵便局員によるお知らせ訪問、郵便局窓口や局前等におけるポスター等の掲示等が行われていたものである。仮に、これらの周知が個別の案内として請求人に行き届かなかったとすれば、顧客に対するサービスないし営業上の配慮が十分ではなかったと言わざるを得ないが、法律的には、当時の国に周知義務違反の過失を認めることはできない。 また、生命保険は、リスクの程度に応じて保険料を負担するという原則(危険公平性の原則)の下に成り立っている制度であることを前提にすると、保険契約者は、特約の切替えをしたか否かにかかわらず、各特約の保障内容に応じた保険料を負担していることになるものである。 したがって、請求人が特約の切替えを行わなかったことにより今回の入院について入院保険金の支払いを受けることができなかったとしても、これを直ちに損害と認定することもできない。 よって、請求人の請求は認められない。 |
【97】手術保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、平成22年11月26日から心房細動による心不全、心房粗細動、心房頻拍・心房細動等の治療のため入院し、平成23年3月4日には経皮的カテーテル心筋焼灼術(別件手術)を受け、その後、同年11月28日に徐脈頻脈症候群の治療のため入院し、同年12月13日にペースメーカー埋込術(本件手術)を受けたところ、別件手術については手術保険金が支払われたものの、本件手術については謝絶された。納得がいかないので、その支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
約款上、別表第3に掲げる「94」のカテーテルによる手術については、1の疾病による入院中に行われたものである場合、手術保険金の支払いは1回が限度になる。 本件の場合、本件手術(ペースメーカー移植術)は、カテーテルを用いた経静脈電極法によるものと認められることから、別件手術(経皮的カテーテル心筋焼灼術)と同様、カテーテルによる手術であると認められる。 また、請求人がした一連の入院は、心拍リズム(脈拍)が不規則になる疾病である不整脈の個別の症状であり、1の疾病によるものと認められる。 よって、別件手術及び本件手術は、先に述べた約款の規定上、ともに「94」のカテーテルによる手術で、かつ、1の疾病による入院中に行われたものに該当することとなるから、手術保険金の支払いは1回が限度となり、既に別件手術に対して手術保険金を支払っている以上、本件手術に係る手術保険金を支払うべきとは認められない。 したがって、請求人の請求は認められない。 |
【98】手術保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、乳腺悪性腫瘍手術・乳房部分切除術(本件手術)を受けたところ、手術保険金の支払を謝絶されたが、現在医療の実際では、乳房部分切除術(温存手術)が主流であるのに、これを乳房切断術に含めないのは時代錯誤もはなはだしく、また、悪性新生物と言われて手術をしたにも関わらず、術後の結果が悪性ではなかったことを理由に手術保険金を支払わないことに納得できない。よって、手術保険金の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
手術保険金の支払対象となる手術を定めた特約約款別表第3には、乳房に関するものとして「2 乳房切断術」及び「3 乳腺全剔出術」が、悪性新生物に関するものとして「88 悪性新生物摘出術」及び「90 その他の悪性新生物手術」が掲げられている。 まず、「2」及び「3」の手術は、乳房の全部切除等を行うものが該当すると解されるから、乳房の部分切除術である本件手術については、これに該当しない。 また、「88」や「90」の手術は、当初の手術目的のみではなく、手術後の病理組織診断の結果においても悪性新生物と認められたものが該当すると解されるから、病理組織診断の結果、悪性新生物とは認められなかった本件手術については、これに該当しない。 よって、本件手術は別表第3に掲げるいずれの手術にも該当せず、特約約款第27条に規定する手術保険金の支払要件に該当しないことから、本件手術について手術保険金を支払うべきとは認められないため、請求人の請求は認められない。 |
【99】損害賠償請求
ご請求の 内容 |
本件保険契約は、10回旅行に行くことができる特典が付加されたものとして申し込んだものである。しかしながら、旅行会(払込団体)が解散し、実際には、10回中4回しか旅行は実施されなかった。よって、債務不履行による損害賠償として、未実施の旅行6回分の費用相当額21万円等を支払うよう求める。 |
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審査結果の 概要 |
簡易生命保険法第7条によれば、簡易生命保険契約の内容は、簡易生命保険法及び同法に基づく命令に定めるもののほか、簡易生命保険約款によるとされているところ、本件保険契約は、団体取扱約款等に定める要件を満たした上で保険料の払込みがされた場合にその割引を行うことを約して成立したものであり、その割引分を活用して旅行等の行事を実施するかどうかは、払込団体が自主的に決定するもので、保険者は関与しないものである。 したがって、本件契約が当該割引分を活用して旅行等の行事を行うことを約して成立したものとは認められないことから、旅行会(払込団体)が解散し、10回中4回しか旅行が実施されなかったとしても、会社が、そのことによる債務不履行責任を負うべきとは認められず、請求人の請求は認められない。 |
【100】解約還付金の支払の可否
ご請求の 内容 |
本件保険契約(契約者を法人、被保険者を従業員(請求外A)とする養老保険。)について、請求外Aが退職したため、社内で定める生命保険加入規定に基づき解約しようとしたところ、解約手続をする前に請求外Aが死亡しているとして、解約に応じてもらえず、請求外Aの遺族に死亡保険金が支払われたが納得できない。保険契約者は、死亡保険金の支払事由が発生したとしても、保険契約を解約する権利を有しているのであるから、解約還付金の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、請求人は、請求外Aの定年退職に伴い、請求外Aの死亡前に本件保険契約を解約すべく、会社に対し解約手続をお願いしたい旨申出したことが認められるが、その際は解約の対象となる保険契約は特定されていなかったものであるから、解約の意思表示があったとまでは認めることはできず、その他請求外Aが死亡するまでの間に請求人から解約の意思表示があった事実はない。 また、本件保険契約は、保険期間の満了又は被保険者の死亡により保険金の支払事由が発生した場合、保険本来の目的を達したものとして保険契約は終了するところ、保険契約者が保険約款の規定に基づき保険契約を解除し得るのは、あくまで保険契約が終了するまでの間であり、被保険者が死亡する等して保険契約が終了した場合には、保険契約を解除することができないものと解されるから、本件保険契約の終了後に、請求人が本件保険契約を解約する旨の意思表示をしたとしても、何ら効力を有しないものというほかない。 したがって、請求人の請求は認められない。 |
【101】契約無効に伴う利息等の支払の可否
ご請求の 内容 |
本件保険契約は、保険契約者兼保険金受取人を請求外A(請求人の夫)、被保険者を請求外B(請求人の子)として、請求人が請求外Aの了解を得ることなく申し込み、かつ、請求外Aの追認も得られなかったことから無効とされたものであるが、契約無効に伴い返還されたのは、既払保険料のみであり納得いかない。受理職員が請求人を騙して本件保険契約に不正に加入させたことに対する慰謝料及び既払保険料を会社が運用することにより得た運用利益相当額の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、本件保険契約は、請求人自身の無権代理行為によって締結されたものであり、受理職員が請求人を騙して不正に加入させたとの事実も認められないことから、会社が不法行為による損害賠償責任を負うとは評価できず、請求人に対して慰謝料を支払うべきとは認められない。 また、簡易生命保険契約において、契約が無効である場合、会社は、簡易生命保険法第79条の規定に基づき、既払込保険料を返還すれば足りるところ、会社は既に請求人了解の下、請求外Aに対して既払込保険料全額を返還している。また、本件の場合、受理職員が請求人に権限がないことを知りつつ、申込みを受理した事実等も認められず、民法第704条に定める悪意の受益者にも該当しない。したがって、会社が既払込保険料の返還に加えて、運用利益相当額、利息その他金銭の支払いを行うべき義務はない。 よって、請求人の請求は認められない。 |
【102】傷害保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、平成22年3月25日、橋から転落して、入院し、障害を残したところ、既往症としてうつ病があったことや、転落現場の状況等を考慮すると、誤って転落した可能性は考え難いとして、傷害保険金、傷害による入院保険金、通院療養給付金及び手術保険金の支払いを謝絶されたが、当該転落は、橋のたもとで川を見ていた時に突風に煽られたものであり、故意によるものではない。よって、傷害保険金等の支払いを求める。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によれば、転落現場の状況について、(1)高さ116cmの欄干が設置されており、過去、誤って転落したケースはなく、(2)転落当日、現場付近では、西風で、平均風速4.6m、最大風速14.7mの風が吹いており、請求人が欄干に手をかけて直立していたと仮定した場合、左斜め後ろ方向から背中に向かって吹き付けていたと推測されるが、仮に最大風速14.7mの風が吹き付けていたとしても、その風力自体、樹木全体が揺れる、もしくは風に向かって歩きにくい程度のものであった。 他方で、(1)請求人は、平成20年6月頃から、適応障害及び社交不安障害により通院治療を受けており、主治医は、転落の当日、被保険者は母親との感情の行き違いがあり、衝動的に転落に至ったと推測されると述べていること、(2)転落の目撃者からの110番通報の内容は、「飛び降りそうな人がいる」「バックミラー越しに飛び降りるのを見た」という内容のものであったこと、(3)請求人は転落直後のみならず、平成23年4月12日にも、転落後に入院した病院の心療内科の医師に対して「あてつけのつもりで飛び降りた」と述べていること等からすると、請求人が自らの意思で橋から飛び降りたものと判断せざるを得ず、本件転落は偶発性の要件を欠き、不慮の事故と認めることはできないことから、傷害保険金、傷害による入院保険金、手術保険金及び通院療養給付金を支払うべきとは認められない。 |
【103】満期保険金の不足額の支払の可否
ご請求の 内容 |
平成15年4月に加入した54歳満期2倍型特別養老保険(満期保険金300万円、死亡保険金600万円)について、加入時に、受理者から満期保険金は300万円の2倍の600万円であるとの説明を受けた。会社からは満期保険金は300万円との説明を受けたが、これでは契約申込時の内容と違う。よって、満期保険金として600万円を支払うよう求める。 |
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審査結果の 概要 |
請求人は、加入時に、受理者から満期時には300万円の2倍の金額が支払われるとの説明を受けた旨主張しているが、受理者はそのような説明を行った事実はないとしており、現在までの払込保険料総額を考えれば、死亡保障の場合は別として、10年後の満期日に払込済み保険料のおおよそ2倍の600万円の満期保険金が支払われる商品の存在は、本件保険契約の成立当時の経済情勢からは想定されず、実際、簡易生命保険においてそのような商品は当時存在しなかったことを考えると、受理者が請求人の主張するような説明を行ったとは考え難い。また、当時、募集活動の際に一般的に使用されていたリーフレットには満期保険金と死亡保険金との関係について、申込者が正しく理解できるように記述されていることが認められ、さらに、請求人へ交付され同人が保管していた保険証書にも、満期保険金の金額として「3,000,000円」と明確に記載されていることからすると、請求人は、申込の時点では、満期保険金が300万円であることを了解していたものと判断される。したがって、請求人の請求は認められない。 |
【104】傷害保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、自転車事故を原因として、足関節の機能障害、神経障害を負っている。左足関節は装具で固定されており、自動運動の範囲が正常の2分の1以下に制限されたものと等しく、また、日常生活動作が著しく制限される障害が残った。よって、傷害保険金を支払うべきである。 |
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審査結果の 概要 |
関係資料によると、被保険者には、左浅腓骨神経領域の障害((1)障害)、左足関節周囲の疼痛のため、長時間の立位と長時間歩行が不能であることによる労務制限((2)障害)及び足関節の自動運動範囲が背屈が25度、底屈が40度に制限されている障害((3)障害)がある。 (1)障害及び(2)障害に適用され得るのは約款別表第3級「44 精神、神経又は胸腹部臓器に障害を残し、日常生活動作が制限されるもの」であり、これは、約款別表備考により「軽易な労務以外の労務に就くことができないもの」、すなわち、全般的な労働能力が通常人の2分の1以下に制限されるような場合を指すと考えるべきであるところ、本件の場合、(1)障害及び(2)障害によって全般的な労働能力が通常人の2分の1以下に制限されたとみることはできない。 (3)障害に適用され得るのは約款別表第5級「86 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」であり、これは、約款別表備考により、「関節の自動運動の範囲が正常の場合の2分の1以下に制限されたもの」をいうところ、本件の場合、(3)障害は正常の場合の2分の1以下に制限されているとは認められない。 以上のとおり、請求人に生じている障害はいずれも約款所定の身体障害の状態に該当せず、これらの障害については傷害保険金を支払うべきとは認められないから、請求人の請求は認められない。 |
【105】傷害保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、平成6年12月19日に病院の検査ベッドからの転落(「本件事故」という。)により、肩関節等に障害が残った(「本件障害」という。)ものであるところ、本件障害は疾病を原因とするものであるとして、傷害保険金の支払を謝絶されたが、納得できない。本件障害は、不慮の事故等による傷害を原因とするものであるので、傷害保険金の支払を求める。 |
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審査結果の 概要 |
被保険者は、本件事故の3日後から、5回入院((1)入院~(5)入院)をしているところ、(2)入院ないし(5)入院の原因となった頸椎症、腰椎椎間板症及び頸椎骨軟骨症は、本件事故を原因として発症したものであるとの証明はなく、むしろ、医学的知見からは、加齢を原因として発症し、徐々に進行したものである可能性が高いと認められる。 そして、本件障害は、頸椎症、腰椎椎間板症及び頸椎骨軟骨症によると考えられ、本件事故を直接の原因として生じたものと認めることはできない。 また、請求人は、障害診断書を提出し、本件障害は本件事故により生じたと主張するが、この診断書は、本件事故当時を含め、その後の(1)入院ないし(5)入院当時には診察しておらず、事故から11年経過後に初診した医師が事故から約16年以上経過して作成したものであること及び診断書の内容と被保険者の事故後の症状経過等に矛盾が生じていること等から、この診断書の記載内容を採用することはできない。 さらに、(1)入院に係る入院証明書、(4)入院に係る入院証明書及び上記障害診断書からは、本件事故後180日以内に本件障害が生じ、かつ固定したと認めることはできないから、請求人の請求は認められない。 |
【106】入院保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
被保険者は、平成21年9月から平成24年2月までの間、6回にわたり入院((1)入院~(6)入院)し、入院保険金の支払を受けた。その後、被保険者は平成24年5月10日から同年7月12日まで入院((7)入院)し、入院保険金の支払請求をしたところ、同一疾病での入院保険金の支払は120日が限度との理由で入院保険金の支払を謝絶されたが、加入時には支払限度の説明を聞いておらず、納得できない。よって、その支払を求める。 |
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審査結果の 概要 |
(1)入院ないし(3)入院の原因は心筋梗塞、(4)入院、(6)入院及び(7)入院の原因は閉塞性動脈硬化症である。医学的知見によれば、心筋梗塞と閉塞性動脈硬化症は、ともに動脈硬化の一症状であり、直接の因果関係のあるものと認められることから、これらの疾病を原因とする上記入院は1の疾病によるものと認められる。 (5)入院は透析用シャントスチールを原因とする上肢血流不全による手指壊疽の診断の下行われたところ、透析用シャントスチールは、閉塞性動脈硬化症等の末梢循環障害が基盤にある患者に発生しやすいとされており、被保険者が(5)入院に先立ち経皮的上肢動脈拡張術を受けていることからすると、(5)入院の手指壊疽も上肢の閉塞性動脈硬化症により生じたものと認めるのが相当である。 したがって、本件入院はいずれも動脈硬化を原因とする疾病によるものであるから、1の疾病によるものとして取り扱うことになる。そして、本件(2)入院ないし本件(7)入院はいずれもその前の入院の終了後1年を経過する前になされたものとなるから、その全期間を通算して120日分を超える入院期間については入院保険金を支払うべきではないことになる。 また、1の疾病による入院についての入院保険金の限度が120日分であることは、本件保険契約の成立当時の約款にも規定されており、本件保険契約の成立後に条件が変更されたものではない。 したがって、請求人の請求は認められない。 |
【107】復活預り金の払込みと復活申込みの承諾等
ご請求の 内容 |
会社に不正、不当な対応があったことから、請求人の各種契約に関する会社の措置に係る請求(保険契約の復活、契約者貸付に係る相殺貸付の手続き等)や慰謝料の支払を求める。 |
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審査結果の 概要 |
以下のとおり、和解案を請求人及び会社に提示し、その受諾を勧告する。 (1)請求人と会社は、次のことを確認し、会社は必要な処理を行うこと。 本件保険契約に係る復活の申込みの際、郵便局による誤説明により復活払込金が不足したため、本件保険契約が復活しなかったものと認められることから、請求人は、本審査結果の決定の後、一定の期間までに、会社に対して本件保険契約の復活の申込みのために必要な復活払込金を払い込み、会社は、同払込金を受領した後、本件保険契約の復活の申込みが行われた日に遡って復活の申込みに対する諾否を決定すること。 上記により本件保険契約が復活した場合、請求人は、復活払込金の払込みの月の翌月から保険期間の満了する同年4月までの間、毎月2か月分ずつ保険料を払い込む義務を負うこと。 郵便局による誤説明により本件保険契約が復活せず、契約者貸付に係る貸付期間の満了日までに相殺貸付の手続を行うことができなかったものと認められることから、仮に、上記1. により本件保険契約が復活した場合、会社は、貸付期間の満了日以前に遡って相殺貸付を行ったこととし、貸付利率が上がらないよう必要な処理を行うこと。 (2)請求人と会社は、次のことを確認すること。 本件保険契約に係る生存保険金について、会社が契約者貸付に係る貸付金及び利息の一部の弁済に全額充当する措置をとったことは有効であること及び貸付金が弁済された分だけ、請求人の契約者貸付を受けることができる金額の残高は増加しないこと。 請求人は、会社に対して、本件保険契約に係る既払込保険料の全額返還を求める権利がないこと。 請求人は、会社に対して、慰謝料の支払を求める権利がないこと。 本件の審査請求に係る手続費用は各自の負担とすること。 |
【108】保険金の倍額支払の可否等
ご請求の 内容 |
被保険者は、転院後の入院中、脳出血を直接の原因として死亡したところ、脳出血の原因は病気によるものとの理由で保険金の倍額支払及び特約死亡保険金の支払を謝絶されたが、脳出血は、転院前の入院中にベッドから転落し左前頭部を強打したことにより引き起こされたものであり、被保険者の死亡は不慮の事故を直接の原因とするものであるから、当該各保険金の支払を求める。 |
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審査結果の 概要 |
被保険者は、転院前の入院中に本件転落事故に遭遇したが、その直後の脳のCT画像に異常はなく、本件転落事故の15日後(転院の3日後)に脳神経症状が出現したために、同日に撮った脳のCT画像に広範囲の多発性脳出血が認められたものであり、被保険者が本件転落事故を直接の原因として脳出血を起こしたものとは認めがたく、むしろ、被保険者の重度の血小板減少症を含む諸々の当時の身体状況に起因して脳出血が発症し、死亡に至ったと考えるのが相当である。 したがって、被保険者は不慮の事故等による傷害を直接の原因として死亡したと認めることはできない。 |
【109】配当金の支払
ご請求の 内容 |
契約時、受理者から、本件保険契約の配当金額について、300万円位になる旨の説明を受けた。本件養老保険リーフレットにメモしてあること、及び、本件年金保険リーフレットを用いて、本件保険契約が満期を迎えた時は満期保険金の500万円と配当金200数十万円で、年金額90万円(一時払払込金額7,126,650円)の即時定期年金に加入することを勧められたことが証拠である。それを信じて加入したのであるから、契約者配当金として当該金額を支払うよう求める。 |
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審査結果の 概要 |
本件保険契約について適用される簡易生命保険約款によれば、本件保険契約に関してこれまでに積み立てられた契約者配当金は会社が支払った額と同額の81,205円と認められ、会社が請求人に対して配当金を追加で支払うべきとは認められない。 また、養老保険リーフレット及び年金保険リーフレットは、いずれも原本が残っていないため、どのような状況で手書きの書き込みがなされたのか判断ができないこと、養老保険リーフレットの「300位」という書き込みが請求人の妻によりなされたことは請求人の妻自身が認めていること、年金保険リーフレットの「約54万円」という書き込みについて、請求人は受理職員が書いたと主張しているものの、当初請求人の妻は自分が書いた字だと思う旨述べていること、受理職員は年金保険リーフレットを使用して即時定期年金を勧めたことを否定していること、請求人宅(事務所)には受理職員以外の郵便局員も出入りしていたことは請求人も認めているため、誰が書いたのか不明と言わざるを得ないこと、及び、受理職員から受けたという説明に関する請求人の主張は曖昧であり、確約されたという金額や確約する旨の表現あるいは確約された時期についても、変遷が見られることからすると、受理職員が本件保険金の配当の確約をしたとまでは認められない。 したがって、請求人の主張は認められない。 |
【110】満期保険金の支払の可否
ご請求の 内容 |
自分が所持する保険証書の原本によると、本件保険契約は平成6年に満期となっている。郵便局に確認したところ、満期保険金を支払済みといわれたため、証拠書類の開示を求めたところ、保存期間が経過しており書類がないといわれたが納得できない。満期保険金の支払を求める。 |
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審査結果の 概要 |
会社が管理しているマスタファイルによると、本件保険契約は、昭和53年3月14日に成立した後、昭和57年11月10日に保険証書が再発行され、その後平成6年3月13日に満期を迎え、同年4月4日、郵便局にて満期保険金が即時払いされていることが認められる。 簡易生命保険法第87条の規定によれば、保険金の支払義務は支払事由が発生した日から5年を経過したとき時効によって消滅するとされているところ、本件満期保険金の支払義務が発生した日である平成6年3月14日からすでに5年以上が経過しており、当審査会に提出された資料上、時効中断事由や会社による時効援用を不当とみるべき事情は見当たらない。したがって、会社が正式に時効を援用した際には、それにより、本件満期保険金の支払義務は消滅することになり、請求人に対して本件満期保険金を支払うべきとは認められない。 したがって、請求人の主張は認められない。 |
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