金融業界への憧れから銀行に就職。そしてかんぽ生命へ
小林が金融業界の仕事に興味を持ったのは、幼少期。銀行員だった父の影響を受けて憧れを持ち、就職活動をする時期になってもその気持ちに変わりはありませんでした。小林 「就職活動では、金融に限らず幅広い業界のお話を伺いましたが、やはり有望な企業への投融資を通じて日本経済に貢献できる金融業界の仕事にあらためて魅力を感じました」財務分析をはじめ金融全般の知識を習得したいと考え、選んだのは地方銀行。夢に近づいた小林でしたが、順風満帆ではなかったと当時を振り返ります。
小林 「入行後は研修の一環で半年ほど窓口事務を、その後2年ほどは個人営業を担当しました。その後法人営業に異動し、融資業務に携わることができたものの、数字に追われて融資先をじっくり分析できない日々に、徐々に自分は営業には向いていないのではと思い始めるようになりました。そんなさなかにリーマンショックが起こり、今こそ一念発起しないと次のチャンスはいつやってくるかわからないと、転職を決意しました」転職先では、キャリアのスタートから資産運用に携わりたいと考えた小林。そこで出会ったのが、かんぽ生命でした。
小林 「当時のかんぽ生命は民営化したばかりで、資産運用部門の人材を募集していました。まさに私が探していたポジションだったので迷わず応募し、無事採用されました」
念願の資産運用部門への配属──出向・海外赴任でのチャレンジが自身の糧に
かんぽ生命に入社した小林が最初に配属されたのは、当時の運用審査部でした。小林 「運用審査部は、投融資先の会社にお金を返済する能力があるかどうかのランク付けをする、信用格付けを行う部署です。業務の流れとしては、まず実際に投融資をする部署から『この会社の社債を買いたいです』という申請が上がってきます。それを受け、運用審査部では、対象の会社の業種を担当する社員が中心となり、詳細な分析を10~20ページほどのレポートにまとめ、部内で議論します」大学時代に簿記を取得したり、前職で中小企業の決算書を見たりしていたという小林でしたが、かんぽ生命の投融資先は主に大企業。地銀時代の業務とは異なる部分も多く、さらなる学びが必要だったと言います。
小林 「空き時間を活用し財務分析の本を読んだり、土日は図書館にこもって証券アナリストの資格の勉強をしたりと、スキルを習得するための努力をしました。やりたかった資産運用の仕事に就けたので、毎日新しい学びを得て充実していましたね」そしてかんぽ生命に入社して7年が経ったころ、みずほグループへ1年間外部出向(アセットマネジメントOneオルタナティブインベストメンツ株式会社とみずほ銀行にそれぞれ半年間)することとなった小林。そのうち半年はニューヨークに赴任するなど、留学経験のない彼にとってはチャレンジングな年になりました。
小林 「当時のかんぽ生命では海外の会社やファンドを見る知見がほとんどなく、外部出向は人材育成という意味もあったのですが、留学や海外赴任の経験がなかったのでたいへん苦労しました。英語力のディスアドバンテージは最後まで解消されることはありませんでしたが、最終的には比較的大きな案件を任せてもらえ、現地の部長に内容を説明し終わったときに、直属の上司から"Good job!"と言ってもらえたのは嬉しかったです」海外と日本企業の事業構造や、融資すべきかどうかを判断する基準、企業カルチャーの違いに戸惑いを覚えながらも刺激を受け、貴重な経験を得た小林。帰国してすぐに担当したのが、ファンド投資に関する審査業務でした。
小林 「当時、かんぽ生命ではファンドの審査基準が整っていない状態。そこで、メンバーと一緒に基準をつくり、問題が出てくるたびに都度整理をするなど体制づくりを進めました。出向先で得たファンド審査に関する知見が活きたと感じています」
機関投資家としての責任をどう果たすか──さらなる成長を求めESG投資推進の分野へ
その後、再び事業会社の審査業務に携わった後、小林は主に社債投資を担当するクレジット投資部に異動になります。クレジット投資部は、投資先の企業と直接コミュニケーションを取れる部署。さまざまな企業への取材や意見交換を実施するエンゲージメント活動(対話)にも注力していきました。小林 「気候変動問題などが世界的な社会課題として認識されるようになってきたことから、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の機運が高まっており、クレジット投資部を含む当社の運用部門でも取り組みを加速させていました。クレジット投資部では、エンゲージメント活動などの実務に加え、未経験のメンバーの育成も担った小林。やりがいを感じる一方で、さらなる成長を求めて異動を決意します。
かんぽ生命が資産を運用する際の原資は、お客さまからいただく大切な保険料です。また生命保険会社の資産運用は、投資期間が長期にわたり、資産規模も大きいです。それ故に投資を通じて社会に与えるインパクトも大きくなります。我々は投融資を通じてお客さまを取り巻く環境や社会をより良くしていきたい。そのためにも投資先の企業にもESG・SDGsに配慮した経営を求める必要があったのです。
エンゲージメント活動の対話の中で、投資先企業に対応を求めていくのですが、社債の投資家は、株式のように議決権を持っているわけではありません。しかしそこに引け目を感じすぎると、対話ではなく単なるQ&Aに終始してしまいますし、逆に強く出すぎてしまうと先方の話を引き出せない。企業とどう向き合えば、機関投資家としての責任を果たせるのか──そこがもっとも難しく苦悩した部分です」
小林 「財務分析に長年携わってきたことで、経済状況の変化に応じて、投資先企業の業績や財務がどう変化するかなどをある程度推測できるようになりました。資産運用のスペシャリストとしてもっと成長するためには、別の分野を経験した方がいいと考え、異動を希望することに決めました」※ ESG投資...財務情報に加えて、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)などの非財務情報を考慮して行う投資行動
※ インパクト投資...財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動
かんぽ生命だからこそできる資産運用──インパクト投資における存在感の向上をめざす
2022年10月より、運用企画部でESG投資推進の旗振り役を務める小林。小林 「会社のESG投資方針の策定や戦略の立案など、各部署とコミュニケーションを図りながら、ESG投資に関連する幅広い業務を担当しています。入社から14年。かんぽ生命で長く資産運用に携わってきた小林は、仕事をする上で大事にしていることがあります。
当社のESG投資では、かんぽ生命らしい"あたたかさ"の感じられる投融資を実現するため、3つの重点取り組みテーマ(『Well-being向上』『地域と社会の発展』『環境保護への貢献』)を設定しています。太陽光・バイオマスといった再生可能エネルギーや、投資した不動産に保育園を誘致する不動産ファンドなど、かんぽ生命が手掛ける投資領域は多岐にわたります」
小林 「かんぽ生命は民営化・株式上場を果たしてから数年が経ちますが、同業大手と比べればまだまだ改善すべき部分もあると思います。そう考えたとき、おそらく自分ひとりでできる仕事は限られている。だからこそ周りの人たちと協力し合い、力を合わせて一人ではできない仕事をしていきたいと思っています。このように将来を展望している小林。資産運用の仕事に興味がある若い世代に向け、かんぽ生命の魅力をこう語ります。
これからはESG投資、とくにインパクト投資の分野で社内の知見をさらに深めるとともに、かんぽ生命の取り組みを社外に発信していきたいと考えています。そのためにも、インパクト投資にかかわるイニシアチブに加盟して情報収集をしたり、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブが主催する『Social Impact Day』などの外部のイベントに登壇したりしています。
またかんぽ生命では、大学が持つ研究領域へ資金を供給し、社会課題の解決を実現するため、インパクト投資を中心とした大学との産学連携の取り組みを進めています。現在、3つの学校法人と覚書を締結していますが、今後はこれらの取り組みを強化すると共に、協定先も増やしていきたいです」
小林 「かんぽ生命は民営化してからの歴史が浅く、取り組むべき課題がある一方で、新しいことにチャレンジできる環境があり、若い方にもやりがいを感じられる場面が多いと思います。また、若手のうちから金額の大きい投資案件に携わることができるため、大きな金額を動かして、社会にインパクトを与えたい方にとってはとてもやりがいがあると思います」有望な会社への投資を通じて、経済・社会に貢献したい。かつて抱いた小林の野心は、かたちを変えていまもなお、燃え続けています。
※ 記載内容は2023年9月時点のものです