Vol.4 食品添加物は本当に危険? 知れば納得の正しい基礎知識教えます
あなたは「食品添加物」と聞いて、どんなイメージを浮かべますか? おそらく大抵の方がネガティブな想像を抱いていることでしょう。
とはいえ、スーパーやコンビニの商品には、ほぼすべてに食品添加物が含まれています。実際からだにどう影響するのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、食品添加物の特徴や安全性についてご紹介します。正しい知識を身につけて、余計な不安を解消しましょう。
食品添加物ってなに?
食品添加物は、食べ物の製造過程で使用される物質の総称です。さまざまな種類があり、それぞれに役割も異なります。
まずは、どんな経緯で発展してきたのかを見ていきましょう。
食品添加物の役割
食品添加物は、主に4つの役割を担っています。
安全性を保つ
「食中毒の危険性をなくす」「酸化による変色を防ぐ」など食品の安全性を保つはたらきがあります。
代表例
- 保存料...ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、ε-ポリリシン など
- 酸化防止剤...L-アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール
- 殺菌料...次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、亜塩素酸あ水 など
味や香りを高める
調味料、香料などにより味や香りを高めるはたらきがあります。
代表例
- 着色料...食用赤色2号、β-カロテン、ウコン色素 など
- 香料...酢酸エチル、バニリン など
- 甘味料...アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物 など
食感や風味を生み出す
「豆腐」「麺類」「パン」などに加えることで、食感や風味を生み出すはたらきがあります。
代表例
- 豆腐用凝固剤...塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン、粗製海水塩化マグネシウム など
- かんすい(麺類)...炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム など
- イーストフード(パン)...塩化アンモニウム、塩化マグネシウム など
栄養を満たす・高める
ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類などにより栄養価を高めるはたらきがあります。
代表例
- 栄養強化剤...L-アスコルビン酸、β-カロテン、焼成カルシウム など
食品添加物のメリット・デメリット
では、食品添加物が私たちの生活にどんな影響を与えているのでしょうか。メリット・デメリットを見ていきましょう。
メリットは「食を豊かにする」
食品添加物は、おいしさを演出するために重要な役割を果たしています。
たとえば女性や子どもが大好きなゼリーやプリン、クッキーにも使用されていて、香りや舌ざわり、食感を演出してくれます。
また、肉や魚などの生ものは日持ちがしません。食中毒を予防し、安全性を高めるためにも保存料や殺菌剤は欠かせないものなのです。
デメリットは「量によっては危険性もある」
その一方で、大量の食品添加物をとりすぎればからだに害がでる危険性もあります。
念のため、どの食品にどれくらいの添加物が含まれているかをしっかりと確認しておきましょう。
食品添加物の限界量と目に見えない危険性
ひとが一生食べ続けても健康に問題がないと認められた食品添加物の1日あたりの摂取量をADI(1日摂取許容量)(※2)といいます。
具体的には1日でどれくらい口にしても悪影響はないのでしょうか。
「薄切りハム」なら限界はどれくらい?
では、スーパーなどで販売されている「薄切りハム」を例に考えてみましょう。
ハムには、保存料である「ソルビン酸」が含まれています。ハムに使用されているソルビン酸の使用基準は、1kgあたり2.0g以下。また、ADIはひとの体重1kgあたり0~25mgです。
この情報をもとに、大人と子どもで1日あたりどれくらいの薄切りハムが食べられるかを算出したものがこちらです。(※3)
大人
ハム:48枚相当(ソルビン酸:1,250mg)
子ども
ハム:15枚相当(ソルビン酸:392.5mg)
これほどの薄切りハムを毎日食べる方はまずいないはずです。あまり食品添加物にナーバスになりすぎず、たくさん含まれているものを避ける程度にしましょう。
複数の添加物の危険性は未知数
添加物には、もうひとつ別の問題もはらんでいます。それは「添加物の複合摂取」という問題です。
厚生労働省が安全性を認めている添加物テストは単品で行われています。これが複合的に摂取された場合の影響についてはきちんと検査されておらず未知数です。
具体的には、どんな食品に何種類の添加物が含まれているのでしょうか? その一例がこちらになります。
スーパーやコンビニの代表的な食品(※4)
食品の種類 | 含まれている添加物 |
---|---|
おにぎり(昆布のつくだ煮) | 調味料(アミノ酸など)、グリシン、カラメルなど約10種類 |
ハムサンドウィッチ | 乳化剤、イーストフード、pH調整剤など10種類 |
お弁当(豚キムチ弁当) | 調味料(アミノ酸など)、グリシン、pH調整剤など約20種類 |
パックサラダ(ツナ・コーン入り) | 乳化剤、増粘多糖類、カロチノイド(色素)など約10種類 |
カップ麺 | 調味料(アミノ酸など)、リン酸塩、たんぱく加水分解物など20種類以上 |
できるだけ食品添加物を減らすには?
子どものためにも、なるべく安全な食生活をこころがけたいもの。そんな方には、食品添加物を調理方法で減らすことをオススメします。
たとえばハムやベーコンなどの加工品を使用する場合、「そのまま食べるのであれば10秒ほど湯通しする」「炒めものやスープに使用するのであれば1分ほど下ゆでする」など、ひと手間かけるだけでかなりの添加物を除去することができます。
正しい知識で食事を楽しもう
私たちの食生活を豊かにしてくれる食品添加物。正しい知識をもてば、余計な不安を感じる必要がないと分かりました。
とはいえ、普段からレトルト食品やコンビニ弁当ばかり口にするのは危険です。外食したら自宅で調理したものを口にするなど、子どもにも影響の少ない食生活を送るようにしましょう。
※1 厚生労働省「食品衛生法(昭和22年12月法律第233号)」から引用
※2 厚生労働省「食品、添加物などの規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)から情報を抜粋
※3 以下の計算式によって算出。
体重50kgの大人の場合
- 毎日摂取しても健康に問題のないソルビン酸の量
25mg/kg体重/日 × 50kg体重 = 1,250mg/日(ADIはひとの体重1kgあたりの1日摂取許容量として表されています) - ソルビン酸の摂取量がADIを超える最低限のハムの量
1,250mg/日 ÷ 2.0mg/gハム = 625gハム/日(使用基準は、食品1gあたりの使用上限量として表されています)
薄切りハムの枚数に換算してみると、625gハム/日 ÷ 13g(ハム1枚) = 48.076...となるため約48枚。
体重15.7kg(1~6歳までの平均)の子どもの場合
- 毎日摂取しても健康に問題のないソルビン酸の量
25mg/kg体重/日 × 15.7kg体重 = 392.5mg/日 - ソルビン酸の摂取量がADIを超える最低限のハムの量
392.5mg/日 ÷ 2.0mg/gハム = 196.25gハム/日
※4 安部司著『食品の裏側』(東洋経済新報社)より情報抜粋
2019.7.5 作成