皆さんは「生活習慣病」が、日本人の死因の上位を占めていることをご存知でしょうか。生活習慣病とは主に、がん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患、加えて、糖尿病・高血圧症・腎疾患・肝疾患などがあり「7大疾病」と呼ばれています。
以下のグラフをみてみると、7大疾病だけでも日本人の死因の約55%を占めているのが分かります。つまり日本人の2人に1人以上が生活習慣病で亡くなっているのです。
主な死因別死亡数の割合
現在、日本人の平均寿命は世界一の水準です。しかし、日常生活に制限のない期間を指す「健康寿命(平均70~74歳)」と「平均寿命(平均80~86歳)」とでは、約10年程度の差があるといわれています[1]。その大きな原因の一つが生活習慣病です。
生活習慣病とは、その名の通り、普段の生活習慣(食生活や運動、睡眠、ストレス、過剰な飲酒や喫煙など)の積み重ねが原因で病気が発症したり、悪化したりする疾患のことです。
平均寿命が延びるとともに、病気全体に占める生活習慣病の割合が増加し、前述の通り、現在では死因の約55%に達しています。
生活習慣が原因となる病気は7大疾病だけでなく、それらにもかかわる脂質異常症や高尿酸血症なども含んでいます。
では、どのような生活習慣により病気の発症がみられるのでしょうか。ここで少し詳しくご説明します。
生活習慣による具体的な病気や症状
生活習慣 | 具体的な病気や症状 |
---|---|
食生活(飲酒、嗜好品など含む)や運動、睡眠などの習慣が悪い | がん、心疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、高尿酸血症、歯周病などのリスクが高まります。 |
糖分が多い炭水化物(米・パン・麺類) 脂質の多い肉類・揚げ物 加工食品(ハム・ソーセージ) 過剰な飲酒 |
血糖や血圧、さらに尿酸値も上がりやすく、同時に栄養がかたよることで口腔内や腸管の環境も悪くなりやすくなります。 |
継続的な喫煙 | たばこの成分が肺の組織に慢性的な炎症を繰り返し起こし、肺がん、心疾患、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病などのリスクが上がります。 |
もちろん、遺伝や家族性、加齢に伴うものもありますので、一概に本人の生活習慣だけが悪いと決めつけることはできません。しかし生活習慣を早期に見直すことでこれらの疾患は防げる可能性があるのです。
多くの方が、自覚症状はもちろん、日常生活に支障がなければ病院には行かないという選択をしてしまいます。例えば「歯が痛いから歯医者に行こう」となっても、「コレステロールの値が高いので、特に異変は感じないけれど内科に行こう」とはなりませんよね。
しかし、生活習慣病は自覚症状が出にくいのが一番の特徴です。症状がないまま放置しておくと、知らず知らずのうちに動脈硬化などが進行していき、ある日突然、胸の痛みや麻痺(心疾患や脳血管疾患)などで病院に運ばれるケースもあるのです。
大きな病気を抱えて入院したり、一度治療をしても後遺症が残ったりすれば、日々の暮らしはおろか、その医療費も高額になります。生活習慣病にかかると、疾患のない場合と比べて医療費総額は約5倍に増えることが以下のグラフからも分かっています。
生活習慣病の罹患有無別の年間総医療費
生活習慣病になる前の状態から健康に投資をするという意識で過ごせば、結果的に「健康寿命」も伸び、また経済的にも負担が軽減されます。
健康寿命を延ばすためには、具体的な症状のない場合であっても日々の暮らし方を見直し、努力を重ねることが必要なのです。
慌ただしい現代社会においては、どうしても自分自身の健康を維持することが難しい場合もあることでしょう。上記のグラフからも分かる通り、約半数近くの方が生活習慣改善等が必要な生活習慣病予備群と判定されており、決して他人ごとではない状況です。
生活習慣病予備群になる方は、加齢とともに代謝が落ちることもあって、年齢を重ねるごとに増えていくのも特徴的です。今一度、自分が予備群か否か、ぜひ健診の結果を見直してみてください。
予備群に入っていたとしても、自分自身の健康と向き合い、改善に取り組むことで、生活習慣病を予防できる可能性は高まります。
諦めずに取り組んでいきましょう!
【参考文献】
【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)
1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
【ホームページ】
福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/
2025.1.15 作成