すこやかコラム 第44回

すこやかコラム 第44回
運動直後の入浴はNG? 覚えておきたい「正しい入浴法」

運動直後の入浴はNG? 覚えておきたい「正しい入浴法」

運動後は疲れをとるため、すぐに湯船に浸かる方も多いのではないでしょうか。しかし、入浴法を間違えるとかえって疲労が溜まってしまうこともあります。
今回は、運動後のケアとしての入浴に焦点を当て、運動直後の入浴は避けた方が良い理由や、正しい入浴法などを紹介します。
※持病をお持ちであるなど、入浴にあたり、医師から特別な指示を受けている方は、そちらの指示に従ってください。

セクション01

ご存知ですか?入浴がもつ3つの作用

入浴には大きく3つの作用があり、それぞれが体にはたらきかけることでリラックス効果や疲労回復効果が期待できます。

温熱作用

体温が上がると新陳代謝が活発になるので、老廃物や疲労物質などが体外へ排出され、痛みの改善や疲労回復につながります。

浮力作用

湯船に浸かると浮力の効果で体重が約9分の1まで軽くなるため、筋肉や関節にかかっていた負担が減少します。心身ともに緊張がほぐれ、だるさを感じにくくなるため、リラックス効果も期待できます。

静水圧作用

水圧によって体がほどよくしめつけられ、マッサージされたような状態になり、むくみ解消が期待できます。また、全身浴の場合は、胸部(肺)が圧迫されることで呼吸の回数が増えるため、心肺機能が活発になって全身の血行が良くなります。

ご存知ですか?入浴がもつ3つの作用

これらの作用は、肩まで浸かる「全身浴」か、腰やみぞおちあたりまで浸かる「半身浴」かによって違いがあります。3つの作用の効果を最大限に高めたい場合は全身浴がおすすめですが、全身浴は体温の上昇が速く、水圧の負荷などが大きいため、高血圧や心臓・肺に疾患がある方は半身浴でじっくりと体を温めるようにしましょう。

セクション02

運動後のお風呂は爽快♪それでも運動直後は避けましょう

運動直後はすぐに汗を流したい!と思うものですが、運動直後の入浴は、運動効果や疲労回復効果が低下する可能性があります。避けたほうがよい理由は大きく分けて2つあります。

  • 脂肪燃焼効果が減少する
  • 運動すると脂肪を燃焼してくれる酵素である「リパーゼ」が活発になり、運動後30分程度はその活動が続きます。しかし、リパーゼが活動している間に入浴して急激に体温を上げてしまうと、そのはたらきが鈍くなり、脂肪燃焼効果が減少する恐れがあります。

  • 疲労回復が遅れる
  • 運動後は、負荷がかかる筋肉に血液が多く集まって疲労回復を促しています。運動直後に入浴すると、本来は負荷がかかる筋肉に集まるはずの血液が全身へ巡ってしまい、酸素の供給や乳酸を排出する機能が低下して、かえって疲労回復が遅れる原因になります。

セクション03

正しい入浴は「運動後30分」

効果を高めるためには、運動後30分程度休憩してから入浴するのがベスト。また、以下の点に気をつけると、さらに入浴効果が高まります!

運動後、しっかりと水分補給を行い、クールダウンする。
※正しい水分補給については過去にご紹介した「喉が渇く前に飲む!「正しい水分補給」を実践しよう」をご覧ください

急激に体温が上昇しないよう、足から心臓にかけてゆっくりとかけ湯(もしくはシャワー)を行う

38~40℃のぬるま湯に10~20分程度浸かる

入浴後、再度水分補給(冷たい飲み物は控える)を行い、急激に体を冷やさないようにする

正しい入浴は「運動後30分」
ワンポイント

忙しくて入浴する時間がない場合は、足湯だけでも効果的です。洗面器などにお湯を張り、体や髪を洗いながら足を温めるだけでも温熱効果を得ることができます。

ワンポイント
セクション04

他にもある!覚えておきたい「NG入浴法」と注意点

運動直後だけでなく、健康に対して逆効果になってしまう入浴法がいくつかあります。

42℃以上の熱いお湯に浸かる

人間の自律神経は、心身を活発にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」がバランスをとりながら成り立っています。熱いお湯に浸かると急激に血圧が上がって交感神経が優位になり、興奮状態になってしまいます。また、熱いお湯は湯冷めしやすく、急激な温度の変化でヒートショックの危険性もあるため、38~40℃程度のぬるま湯がおすすめです。

42℃以上の熱いお湯に浸かる
長風呂をする

38~40℃程度のぬるま湯でも長風呂は禁物です。長く浸かると体内の熱が逃げ場をなくして「浴室内熱中症」になる危険性があります。体温を調節する機能の低下や脱水症状などによって命の危険にもつながるため、10~20分程度の入浴時間を目安にするとよいでしょう。

長風呂をする
食事後すぐに入浴する

食後すぐに入浴すると胃腸の血行が悪くなって胃液の分泌や胃腸の運動が停止し、消化不良が起こります。また、食後は副交感神経が優位になっているため、眠くなりやすいです。浴室内での事故につながる危険性もあるため、食後は30分~1時間程度の時間をあけてから入浴しましょう。

食事後すぐに入浴する
豆知識
「お風呂でリラックス」は日本だけ!?

お風呂を楽しむ文化は、実は日本独特のもの。欧米では体をきれいにする目的なので、浴槽(バスタブ)に浸からずシャワーだけで済ますことも多いそう。さらに欧米ではシャワーしかない「ウォークインバスルーム」のお風呂場が現在人気だそうです。

まとめ

運動後の入浴は至福のひと時ですが、間違った入浴法では逆効果になってしまいます。運動効果や疲労回復効果を最大限に得るため、「20・30・40(入浴時間20分、運動してから30分後、40℃程度のぬるま湯)」を合言葉に、今日から正しい入浴法を実践してみましょう。

2022年11月公開

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