みんなの健康トークライブ

かんぽ生命健康づくりシンポジウム2014
~常に向上心、未来へタックル~ 開催報告

1.講演

講師:栄和人氏(至学館大学レスリング部監督)

吉田沙保里選手をはじめ数々のオリンピック金メダリストを育てた栄監督に、どうすれば精神的にも肉体的にも強い選手が育つのか、また、夢や目標を持つことや挫折から学ぶことの大切さなど、強く健やかな心を持つヒントをご自身の経験をもとに熱く語っていただきました。

基調講演の模様

講演の模様

栄和人氏(至学館大学レスリング部監督)

栄和人氏(至学館大学レスリング部監督)

明確な目標設定が夢を実現させる

みなさん、こんにちは。私をまだ理解されていない方がいらっしゃるかもしれませんが、アテネ、北京、ロンドンと3つのオリンピックで吉田沙保里選手を肩車したり、逆に肩車されたり、投げ飛ばされたりしていたのが私です。あのようなパフォーマンスも、ご両親や小さい時から育ててくれたコーチなど、それまでの吉田選手に関わっていただいた方々のおかげがあったからこそできました。感謝の気持ちでいっぱいです。

ロンドンオリンピックでは、吉田沙保里選手、伊調馨選手、小原日登美選手が金メダルを獲りました。たかがレスリング、たかがオリンピックかもしれません。しかし、彼女たちはオリンピックで金メダルを獲ることを明確な目標とし、人生をかけて取り組んだことでそれをなし得た人たちです。伊調選手は中学の頃に「姉妹でオリンピックに行きたい」、吉田選手は小さい時に柔道の谷亮子さんの試合を見て「オリンピックに行って活躍したい」と、まだ女子レスリングがオリンピックの種目にもなっていないのに、それを自分の目標と決めて頑張り、夢を実現させたのです。しかし、私自身は違いました。

私は高校からレスリングを始めて高校チャンピオンになったのですが、その頃は身近にオリンピック選手がいないこともあり、オリンピックを目指すという実感を持てませんでした。大学に進学しても先輩に手も足も出ない状態でしたし、将来は教員になるつもりでいましたから、目標もなくただ練習をしているだけの選手でした。ところが大学3年になって先輩たちの就職を見ていると、学業ではなくレスリングの成績がいい順番に決まっていく。その時、自分がやるべきことはレスリングの結果を残すことだとわかりました。目の前の目標がわかれば気持ちも変わります。練習の量も増えますから、成績もよくなります。そして、大学4年で全日本チャンピオンの先輩に勝てたことでようやくオリンピックへの夢を持つことができ、青春をかけた練習をして世界大会で4位になったのです。

大きな挫折を味わったからこそ、大きな試練を乗り越えられる。

2年後のロサンゼルスオリンピックにも当然行けるだろうと思っていたのですが、最終選考で敗れてしまいました。「オリンピックには魔物がすんでいる」と言われますが、オリンピックの予選会にも魔物はいて、プレッシャーで不安になっていた私はのまれてしまったのです。負けて、「自分の人生は終わった」と感じた私は全てのことがどうでもよくなり、アパートに引きこもって2か月以上も誰とも会わない生活をしていました。そんなとき、ふと奄美大島の実家へ電話をかけたら、母親から父親が15キロも痩せたと聞かされたのです。私は思わず「4年後のオリンピックにもう一回挑戦する、もう一回頑張るから」と母親に言い、電話を切ってトレーニングウェアに着替えて走り出しました。再び、オリンピックが私の中で明確な目標になった瞬間です。4年後、私はソウルオリンピックに出場することができました。

同じように大きな挫折を味わって復活したのが小原日登美選手です。アテネオリンピックの最終選考会で吉田選手に負けた彼女は精神的に不安定な状態となり、実家のある青森に帰ってレスリングから離れました。その後、同じくレスリングをやっていた妹のセコンドについたことをきっかけに復帰しますが、次の北京オリンピックの最終選考でも吉田選手に負けてしまう。結局、北京オリンピックにはコーチとして行くことになったのですが、練習パートナーとして清々しい顔で吉田選手を支え、金メダルへと導いてくれました。そして、48キロ級だった妹が現役を引退したことで55キロ級から48キロ級へと階級を落としてロンドンオリンピックを目指し、金メダルを獲得しました。そのときの彼女は30歳。年齢なんて関係ありませんでしたね。
小原選手の苦労は私とは比較にならないくらい大きいものですが、私も彼女も大きな挫折を味わったからこそ、大きな試練を乗り越えられたのではないでしょうか。

結果の出せる目標を設定し、達成感を得ながら進む。

年齢、性別、職業を問わず誰のもとにも試練は訪れますが、その試練は神様が人の心の強さを確かめているんだと思うのです。例えば目標を立てた時、実現に向かって努力をしている過程での心の強さを確かめられているのでは。結果が出ている時はいいのです。でも、負けた時はどうなるのか?それを試されているように思うのです。結局は自分が頑張らないといけない。私と小原選手はレスリングを頑張って立ち直れましたが、それができない人もいます。誰かが声をかけてあげたり、相談に乗ってあげたりしてほしいですね。

人はいろいろなことで悩みながら生きています。苦しいこともたくさんあると思いますが、苦しさの中にも楽しみはあります。それを見つけ出すためには、目標を持つことです。どんなものでもいいです。大切なのは結果を出せる目標であること。「これくらいなら行けるかな」という明確な目標を立てて、それを着実に叶えて歩んでいく。そうすれば達成感が得られますから、楽しくなります。簡単な目標ではなく、ちょっと頑張れば達成できるという微妙な設定は難しいかもしれませんが、そういう目標を立てることに人生の楽しみがあることをご理解いただいて、頑張ってもらいたいと思います。

2.みんなの体操

実演:小野梨沙氏

昨年の3月までNHKテレビ・ラジオ体操に出演されていた小野梨沙氏が「みんなの体操」を実演。栄監督にも特別にご参加いただき、会場のみなさんとともに楽しく身体を動かしました。

体操の模様

体操の模様

「みんなの体操」は、座ったままでもできる簡単な体操。「ユニバーサルデザイン」という考え方のもと、年齢・性別・障がいの有無を問わずに全ての方々が楽しく安心してできる体操として平成11年に考案されました。かんぽ生命はNHK、NPO法人全国ラジオ体操連盟と共同で、ラジオ体操と合わせて普及促進に取り組んでいます。おなじみの「ラジオ体操」は昭和3年、昭和天皇即位記念に当時の逓信省簡易保険局が制定した、いつでも、どこでも、だれでも、道具なしでできる体操です。かんぽ生命のホームページでは、「ラジオ体操第一、第二」及び「みんなの体操」を動画で紹介しています。ご一緒に身体を動かしてみませんか?

ラジオ体操動画映像:ラジオ体操第一、第二、みんなの体操を動画で紹介します。

3.トークセッション

栄和人氏(至学館大学レスリング部監督)
吉田沙保里氏(オリンピック女子レスリング金メダリスト)
司会:中野耕史氏(Kiss FM KOBEパーソナリティ)

トークセッションの模様˜

トークセッションの模様

「澤さんに会うために、神戸へ来ています」

司会
ここからはお待ちかねの第二部トークセッションです。先ほどご講演いただいた栄和人監督とともにスペシャルゲストの吉田沙保里選手にもご登場いただきます。みなさま拍手でお迎えください。

吉田氏
みなさん、こんにちは。オリンピック、世界選手権があるたびに応援いただきありがとうございます。おかげでオリンピック3連覇、世界選手権11連覇、合わせて世界V14を達成することができました。今年からは新階級に挑戦し、これまでの自分の記録と戦いながら新たな記録をつくりたいと思っています。変わらずの応援をよろしくお願いします。

司会
今日は金メダルをお持ちいただいているとか。

栄氏
(メダルを手に取りながら)アテネオリンピックのものが150グラム、北京オリンピックが200グラム、ロンドンオリンピックは440グラムもあります。次のオリンピックは1キロ、2020年の東京オリンピックでは3キロくらいになっているんじゃないですかね(笑)。

司会
大変なことになりそうですね(笑)。貴重なものを生で見せていただきありがとうございます。ところで、神戸に来られることはあるのですか?

吉田氏
大会は東京が多いのですが、神戸にはプライベートで来ていますね。(INAC神戸レオネッサに所属している)澤 穂希さんと仲良くさせてもらっているので、澤さんのお家に遊びに行ったりしています。

司会
お家に行かれるほど仲がいいのですね。国民栄誉賞を受賞されているお二人ですが、どのような話をされているんですか?

吉田氏
そのときどきで変わりますけど、恋愛の話が多いですね。澤さんは師匠なんで。

司会
師匠ですか?

吉田氏
はい。いろいろ教えてもらっています。

司会
なるほど。本日はプライベートでなじみの深い神戸に来ていただいているのですね。

「監督やコーチの言葉が背中を押してくれます」

司会
今年の2月はソチオリンピックが開催されていましたが、ご覧になりましたか?

吉田氏
見ていました。私は今、名古屋の至学館大学で練習しているので浅田真央選手とは仲良くさせてもらっているんです。ソチオリンピックが終わったあとも、メッセージを送りましたよ。オリンピックには魔物がすんでいたりするのでいろいろなことがありますが、オリンピックは本当に感動します!私は、試合よりも試合に入る前の選手が気になるんですよ。どんな気持ちなのかな?とか、どんな顔つきをしているのかな?とか。

司会
選手目線で見てしまうのですね。監督はどうご覧になったのですか?

栄氏
日本で見ていると、メダルを取った人が何度も何度もテレビに出るじゃないですか。ああ、吉田選手もこうやってメディアに出ていたのかなと思いましたね。

吉田氏
オリンピックの現地にいると、日本での騒ぎ方がわからないんです。今回のソチオリンピックを見て、こういう風に放映されていたんだなと思って、また感動しました。

栄氏
あと、真央ちゃんの演技を佐藤コーチの言葉が後押ししたとテレビで見たのですが、私はどんな言葉で吉田選手を後押ししたのですかね?

吉田氏
覚えていませんね(笑)。でも、試合前に声をかけてくれることは本当に心強いんです。不安やプレッシャーに押しつぶされそうになった時、監督やコーチからの言葉が背中を押してくれて、"ひとりじゃない"ということを感じさせてくれるんです。

司会
特に印象に残っている言葉はありますか?

吉田氏
ロンドンオリンピックでは、父親からの言葉ですね。「小さい時のレスリングを思い出せ。小さい頃からやってきたことは身についているから」と言われたのが印象に残っています。

栄氏
私の言葉じゃなかったんだ...。

吉田氏
いやいや、監督は技を教えてくれましたよ。「この選手はこう来るからこうしろ」っていうのを的確にアドバイスしてもらえたので、「それで行く!」と心を決められました。

「よく食べ、よく寝て、よく運動する。普通のことが大切」

司会
体調管理や気持ちのコンディショニングを健康に保つ秘訣はあるのですか?

吉田氏
よく食べ、よく寝て、よく運動する。普通のことですけどね。それが大切なんじゃないかと。睡眠はたっぷりとります。普段は朝練習の後に昼寝をしていますから。練習で体力を使うので昼寝をしないと身体が持たないんですよ。その後にご飯を食べるのですが、以前は一度にたくさん食べられず1日5食、食べていました。

栄氏
彼女はお菓子が好きで、子どもの頃からお菓子をいっぱい食べていたことで食が細くなっていました。大学に来て僕の厳しい練習できつくなってくると扁桃腺が腫れたり、熱がでたり、風邪を引いたりして。これはおかしいなと思ったら、やっぱり食生活が悪かったんです。指導をしてちゃんとした食事を摂るようになったら、現役の世界チャンピオンに勝ち始めましたからね。

司会
そうやって健康管理がどうあるべきかを選手に指導されていると思うのですが、一般の方でも気をつけられる健康のコツがあれば教えてください。

栄氏
それはもう腹八分目で3食を食べることですね。人って自分ではあんまり食べていないと思っていても、意外とたくさん食べていたりするんですよ。そこを意識してもらって。そして、身体も少し動かした方がいいですよね。

司会
吉田選手は、お菓子を控えるということですか?

吉田氏
そうですね。でも、女性ですから甘い物を食べたくなる時もあります。そんな時は食べ過ぎに注意して、我慢せずに食べています。あとは監督が言われたように腹八分目と小まめな運動。先ほど「みんなの体操」をされていましたけど、「ラジオ体操」や「みんなの体操」など簡単にできる体操を取り入れて、身体を少し動かすだけでも違うと思いますよ。

司会
「ラジオ体操」はみなさん、子どもの頃からなじみのある体操ですしね。

吉田氏
私は、朝が苦手だったんですけど、子どもの頃はラジオ体操カードを持って、印鑑を押してもらうのを楽しみに通っていました。しっかり「ラジオ体操」をすると、いい運動になりますね。

「目標を明確にして、ひとつひとつクリアしていく」

司会
昨年の全日本選手権は、55キロ級で戦う最後の試合でした。やはり特別な思いがありましたか?

吉田氏
55キロ級で世界V14を達成してきて、それが最後となる大会でしたので今までやってきたことを思い浮かべながら出場しました。優勝で飾れたことはよかったですね。でも、レスリングを辞めるわけではないですし、オリンピックのために53キロ級でやるのは自分で決めたことなので、そこで新たな記録を作っていけばいいという気持ちで向かっています。今は3月15・16日に東京でワールドカップがありますから、そこで優勝するのが目標。目の前の大会ひとつひとつをクリアしていけば自然と記録はついてきますから、そんな気持ちでトレーニングも行っています。

司会
そうやって常に向上心を持って戦い、世界大会で結果を出されています。次のオリンピック、さらには2020年の東京オリンピックも視野に入っていますか?

吉田氏
とりあえず、2年後のリオデジャネイロですね。そこで4連覇をするというのが今の目標であり、夢です。2020年の東京では若手もどんどん上がってきていると思いますし、その中で自分が代表に選ばれれば絶対に出たいですね。日本のみなさんに生でオリンピックの凄さを感じてもらえる機会ですし、そこで私が戦っている姿を見ていただいて感動を与えられたらうれしいです。

司会
若い選手が出て来ても世界のトップでいられる吉田選手の強さはどこにあるのでしょう?

吉田氏
負けず嫌いですから、若い選手にも「まだ負けない!」という気持ちは常にあります。試合だけでなく練習でも負けたくないので、ポイントを取られたら絶対に取り返します。

栄氏
指導者から見ても、彼女は本当にメンタルが強い。くよくよせずにスパッと切り替えられる。

司会
今日は「常に向上心、未来へタックル」というテーマで行っているのですが、みなさんにも吉田選手のように強い気持ちや向上心を持って生活してもらえるような、アドバイスはありますか?

吉田氏
スポーツでもなんでもいいので、明確な夢や目標を持ってもらいたいですね。夢や目標は明確になるほど、それに向かって頑張れるし、楽しめます。私は今、レスリングを通しての夢や目標があって、それのために楽しく、そして一生懸命に取り組んでいます。苦しいこともありますが、勝った時の喜びは大きいですし、たとえ勝てなくてもそれまで頑張ったことが自分のプラスになっていると信じています。一度きりの人生ですので、みなさんも夢や目標を持って、思いっきり楽しみながら、頑張っていただきたいと思います。

司会
ありがとうございます。監督はいかがですか?

栄氏
今、吉田選手が言ったとおりです。楽しくやっていただけたらいいですね。

司会
本日は貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。ありがとうございます。

4.抽せん会 ~ 閉会

栄監督と吉田選手にご協力いただき、お楽しみ抽せん会を行いました。抽せん会の最後には栄監督から"当せんした1名が吉田選手と握手できる"というサプライズプレゼントをいただき、会場は大きな盛り上がりを見せました。

抽せん会の模様

抽せん会の模様

かんぽ生命では、ラジオ体操の普及推進や「健康づくり」をテーマにしたトークライブの開催などを通じて、皆さまの健康づくりに積極的に貢献したいと考えております。
今後ともかんぽ生命をよろしくお願いいたします。