広島県 安芸高田市立美土里小学校
九代目美土里グリーンピース の皆さん
「来年も受賞を」
先輩の思いを受け継ぎ、
ついに勝ち取った金賞
先輩の思いを受け継ぎ、
ついに勝ち取った金賞
- インタビュイー
- 教諭 古木先生
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- まずは、受賞の感想と受賞を聞いた際の子どもたちの様子を聞かせてください
- 昨年度に銀賞を受賞してそれも非常に嬉しかったのですが、今年は金賞とご連絡いただいたときには、(とても驚いて)最初は子どもたちも私も受賞の実感が湧きませんでした。徐々に金賞受賞を実感するにつれて、子どもたちの表情も喜びでどんどん明るくなっていきました。私自身も、練習を重ねるごとに子どもたちがどんどん上達していく様子を間近で見ていて、彼らの努力が金賞という形で実を結んだことが、担当教諭としても非常に嬉しく思っています。
- 「美土里グリーンピース」は九代目とのことですが、子どもたちにとってこのチームはどんな存在なのでしょうか?
- 金賞を受賞したメンバーに聞いても、全員が「1年生のときから美土里グリーンピースに入りたいと思っていた」というほど、美土里グリーンピースは子どもたちにとって「美土里小学校の代表チーム」という憧れの存在になっています。このチームに入るために自宅で先輩の体操を映像で見て練習したりといった努力をしていて、美土里グリーンピースが子どもたちにとって大きな目標になっていると感じています。
また、例年ラジオ体操コンクールが終わると卒業する6年生から下級生に思いを伝える機会を設けていて、今年のメンバーも昨年度の6年生から「来年も受賞してほしい」という思いを受け継いで、今年度に挑みました。こうして上級生から中級生、下級生へと思いが受け継がれていきながら美土里グリーンピースの伝統が生まれていると思います。
- 今回の取り組みを通じて、子どもたちにはどのような成長・変化が見られましたか?
- 今年度は教職員の中でも「子どもたちで教え合うようにしていこう」と決めていました。そのため、私たち教職員はラジオ体操に取り組む環境を作って、子どもたちがお互い教えあったり、タブレット端末で(体操の様子を)録画して体操のポイントを確認したりしながら練習していきました。(任せていくことに)当初は不安もありましたが、少しずつ子どもたちが主体的に取り組むようになっていく様子を近くで見ていて、私自身このやり方が間違いでなかったと感じていますし、何より子どもたち自身にとって「自分たちで作ったラジオ体操で日本一を取れた」ということが自信につながったと思います。
また、美土里グリーンピースのメンバーが活躍する姿を見て、中学年・低学年の子どもたちにも「かっこいい」「あんな風になりたい」という憧れが生まれていて、先輩の背中を追いかけて少しずつ積極的になりつつあることも、ラジオ体操に取り組んだことによる良い影響ではないかと思います。
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- 練習の様子で印象的だったことはなんですか?
- メンバーの半数以上が昨年度銀賞を受賞していたので、当初は「昨年度に(銀賞を)取れたんだから、今年もいける」という雰囲気があったのですが、自分たちで動きのポイントをチェックするうちに「ここはどうなんだろう?」という疑問を持つようになってきました。この気づきが生まれたことが、昨年度よりも完成度の高いラジオ体操を実現して、金賞受賞につながった大きなポイントになるのではないかと思います。
- 最後に、美土里小学校の子どもたちにとってラジオ体操に取り組む意義をお聞かせください。
- ラジオ体操は子どもたちにとって身体作りの基盤となるものだと思います。ラジオ体操は、大人がやっても学べば学ぶほど難しく、細かなところで動きがずれてしまったりリズムが崩れてしまったりします。そうしたラジオ体操を少しでも綺麗に実践しようと努力しながら、柔軟性やリズム感を1年生のときから磨いてきた美土里グリーンピースの子どもたちは、体育の授業でも優秀ですし、ラジオ体操がみんなの身体を作ってきたのだと実感しています。
鹿児島県 中種子町立増田小学校
6モンキーズ の皆さん
「教える」体験が子どもを成長させる
- インタビュイー
- 教諭 体育主任
浜田先生
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- 受賞したときの気持ちを教えてください。
- 昨年は金賞をいただいていたので、私も子どもたちも、うれしいより悔しい気持ちが、先に来ました。しかし、来賓の皆さんやルカリオが参加してくれた授賞式を迎え、全国2位はすばらしい結果だったのだ、と実感しています。
今年は昨年からさらにレベルアップするため、「呼吸」をテーマにして取り組みました。どのタイミングで息を吸う(吐く)のか、そのことで体のどの部分に効果があるのか、をより強く意識しました。
目標には一歩届きませんでしたが、6年生は、十分にレベルアップしてくれたと思います。はじめは技術の差があったものの、練習を重ねるごとに息がぴったり合うようになり、安心して任せられるチームに成長してくれました。
- ラジオ体操へ積極的に取り組む意義は、どんなところにありますか?
- まず体力面の向上に、ラジオ体操の影響が大きいと考えています。増田小学校の児童は、運動能力調査のなかでも立ち幅跳びと反復横跳びで、全国平均、県内平均を大きく上回っています。ラジオ体操第一で、2回出てくる「腕を振って脚を曲げ伸ばす運動」が、ふくらはぎの筋肉を鍛え、瞬発力を身に着けてくれているのではないかと。
コミュニケーションの面でも、ラジオ体操は良い機会になります。本校では、すべての学年をふくむ「縦割り班」で、上級生が下級生にラジオ体操を指導しています。
6年生の子どもが、1年生にもわかるように教えるのは、簡単ではありません。言葉で表現するのが苦手な子どもも、はじめは手とり足とり、工夫しながら一生懸命に教えています。いつの間にか、うまく言語化できるようになるのをみると、成長を感じますね。
- 下級生にとっても、良い体験になっているのではないでしょうか。
- 目標に向かって真剣に取り組む先輩の姿を、間近に見られるのは貴重な体験だと思います。ラジオ体操が伝統として学校に根付き、コンテストの舞台に立つことが、憧れの対象になっています。増田はスポーツ熱が高い土地柄で、地域の方からの期待もあり、子どもたちはみんなラジオ体操に前向きです。
今後も日本一は大きな目標ですが、子供たちには順位だけにとらわれず、伸び伸び取り組んでほしいと思います。自分たちのラジオ体操を高めていくことに集中して、その先に結果がついてくれば、素晴らしいと思います。
埼玉県 春日部市立江戸川小中学校
江戸川ラジオKIDS の皆さん
ラジオ体操なら運動が苦手でも輝ける
- インタビュイー
- 教諭 体育主任
山内先生
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- 「江戸川ラジオKIDS」はどのように選考しているのですか?
- 1〜5年生の児童を対象に、2回のオーディションで選考します。1回目は前年度の3月、2回目は6月に実施します。
その間の3カ月は、自主練習の期間です。児童が自分自身を高めるために、どれだけ努力できるか、主体性を大事にしています。
選考基準には、「正しく、メリハリのある動き」を設定しています。ラジオ体操は単なる演技ではないので、運動の意味を理解して、力を入れるところ、抜くところの強弱が大切だと考えています。
また、ラジオ体操は、練習した分だけ上達することができます。ラジオ体操は、運動が苦手な子どもでも代表になれます。どの児童にも平等にチャンスがあるのが良いところです。
今年は、より多くの児童が、オーディションに参加しました。「江戸川ラジオKIDS」はみんなの憧れの存在です。
- 取り組みのなかで、子どもたちの変化はみられますか?
- 2回目のオーディションに合格した最終メンバーは、夏休みまでの1カ月間、集中して練習します。子どもたちは練習を進めるうちに、NHKの「テレビ体操」を真剣にチェックしたり、お互いに動画を撮って改善点を伝え合ったりと、細かいところまでこだわるようになります。
子どもが主体的に取り組むと、こうまで一生懸命に研究するのだ、と驚かされます。
- さまざまなご苦労もあるのではないでしょうか?
- 今年は、コロナ禍で思うようにメンバーが揃わず、大変な思いをしました。練習の最後に(応募用の)動画を撮るのですが、毎回「これが最後だ!」という気持ちで挑みました。
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- 受賞したときのお気持ちを教えてください。
- 学校としては4度目の挑戦で、悲願の3位入賞です。優秀賞はいただいた経験がありますが、重みが違うと感じました。
日本一を目指していたので、悔しさはありますが、やはりうれしい気持ちのほうが大きいです。今後も可能な範囲で取り組みを続け、ラジオ体操がもっと身近な存在になっていけば、技能もさらに向上すると考えています。
本当のゴールは受賞ではなく、健康な体をつくることです。ラジオ体操は、体を動かす楽しさ、清々しさを感じられる体操だと思います。より多くの児童が、生涯に渡って運動に親しむことに、つながってほしいと願っています。
沖縄県 うるま市立南原小学校 の皆さん
がんばりたくなる工夫が子どもたちを前向きに
- インタビュイー
- 中央:校長 新城先生
左:体育主任 新垣先生 - 右:
地域コーディネーター
(PTA事務員) 友寄氏
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- コンクールに参加した理由を教えてください。
- 友寄氏:「おもしろいコンクールがある!」という教頭先生からの提案がきっかけで、応募することになりました。元々、運動会や新春駅伝大会が行われるほど、地域のスポーツがさかんな土地柄です。住民によるラジオ体操会は、1年を通して毎日行われています。
南原小学校PTAが主催する夏休みのラジオ体操会も以前から続いていて、コンクールにはふだん通りの取り組みを応募した形です。
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- ラジオ体操は子どもや地域に、どんな影響がありますか?
- 友寄氏:ラジオ体操は、地域の良いコミュニケーションツールになっています。おじい、おばあと、子どもたちが顔見知りになって、気軽に声をかけあっているのを見ると、良い雰囲気ができているな、と感じます。子どもたちがいなくなる9月1日の朝には、大人たちから「さびしいさあ」という声が聞こえてきます。
新垣先生:大人だけでなく、中学生や高校生とも知り合って、エイサー(盆踊りに当たる沖縄の伝統芸能。地域によって異なる型を持つ)を教わるなど、伝統の継承にも一役買っています。こうした縦のつながりを作るのは、夏休みのラジオ体操でなければ難しいでしょう。
友寄氏:ここの子どもの多くは、学業や仕事のために、大きくなると地元を離れます。けれど、ラジオ体操をきっかけに得た地域の人との関わりは、いずれ帰ってくる動機になると期待しています。小さいときに自分がしてもらったことを、自分の子どもにも体験させたい、と考えるのではないかと。
- ラジオ体操を継続するための秘訣があれば、教えて下さい。
- 友寄氏:夏休みに毎日早起きするのは大変で、特に地区をまとめるリーダーには負担がかかります。6年生の家庭が担当するのですが、自分が休むと(参加した印の)スタンプが押せないなど、他の子どもたちに迷惑をかけてしまいます。私も経験しましたが、家族も含めて、寝坊できないプレッシャーがあります。
そんな労をねぎらって、リーダー賞として売店で使えるドリンク券を進呈しています。すると、リーダーには、他の子どもたちから羨望の眼差しが向けられます。アイスクリーム券も同じですが、モノではなく、自分にも人にも誇れる"がんばった証"が宝物なのです。
すでに、「来年は自分がリーダーをやる!」という意気込みを持った子どももいます。
新垣先生:「がんばることがかっこいい!」と、児童に思ってもらえる空気づくりが大切ですね。
大阪府 摂津市立鳥飼北小学校 の皆さん
児童の主体性を促した
「目標」の力
- インタビュイー
- 教諭
塚本先生・八木澤先生
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- 子どもたちはどんな姿勢で取り組んでいますか?
- 塚本先生:5〜6年生からなる体育委員は、10月の運動会に全校児童の前でラジオ体操の見本を務めます。せっかくなら体操のレベルを上げよう、日本一を目指そう、と呼びかけて昨年から応募しています。
昨年は奨励賞をいただきました。今年はさらなるステップアップを目指して、体育委員の児童たちが工夫してくれました。率直に言って、全員が最初から乗り気だったわけではありませんが、動き始めるといろいろなアイデアが出てきました。
体育委員が全学年のクラスを回り、ラジオ体操の基礎をレクチャーする取り組みでは、クイズ形式を取り入れたり、低学年の児童にわかりやすい伝え方を考えるなど、子どもたち同士でコミュニケーションを取っていました。自分たちからラジオ体操の質を上げるべく、集まって自主的な練習もしていたようです。
- コンクールに参加することの影響は?
- 八木澤先生:目標を持つことの大切さを実感しています。明確なゴールがあるとがんばれますし、他者からの評価があれば、さらに自信につながります。
本校は委員会活動がさかんで、体育委員以外にもさまざまな取り組みが行われています。校長や担当教員など校内で褒められることはあるのですが、外から評価を受ける機会は少ないのです。今回の文部科学大臣賞の受賞は、子どもたちの大きな達成感につながると思います。
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- ほかの児童にも影響はありましたか?
- 八木澤先生:運動会で行うラジオ体操のクオリティが上がりましたね。学校できちんとラジオ体操を教える機会はあまりなく、見様見真似でやっている児童も少なくありませんでした。
ラジオ体操は動きを伴うストレッチで、準備運動としては、とても理にかなっています。体育委員のレクチャーでは、例えば腕を伸ばす運動なら、細かくどの部分に注意して伸ばせばよいか、その理由は何か、という点まで伝えます。教わった基礎を意識するほど、体の動きは良くなります。
- 今後は取り組みをどのように発展させていきますか?
- 八木澤先生:学校でのラジオ体操は、これまで運動会や水泳の前に行う程度でしたが、今では児童にも教員にも、優れた準備運動だという認識が広がっています。全部通しでなくても、一部でも体育の授業やクラブ活動に取り入れてほしいですね。
塚本先生:体育委員の児童には、各クラスでラジオ体操の実践をリードしてくれたら、と期待しています。さらに「下級生のクラスもサポートしよう」と、子どもたちから主体的な動きが起これば、素晴らしいと思います。