すこやかコラム 第33回

すこやかコラム 第33回
昔の街並みに意外な発見も! 古地図ウォーキングに出かけよう

昔の街並みに意外な発見も! 古地図ウォーキングに出かけよう

街を歩いているとき、「なぜ川がないのに地名に川がついているの?」「読みにくい地名だけど由来は何だろう?」などと、疑問を抱いたことはありませんか?「昔は川があったから」「偉い人が住んでいたから」などの由来を聞いても、ピンとこない……。
かつてのその場所の姿を知る手掛かりとなるのが「古地図(こちず)」です。古地図には、昔の姿がしっかりと記録されています。知らなかった「街のルーツ」を知ることができるかもしれません。
今回は古地図を使って、いつもとは違う街歩きを楽しむ「古地図ウォーキング」をご紹介します。

※新型コロナウイルス感染防止のために必要なことや、周囲の人への配慮いただきたい点を踏まえた上で、安全・安心にウォーキングに取り組んでください。
新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点と、運動事例について(スポーツ庁)

セクション01

時代ごとの古地図とその特徴

一口に古地図といっても様々な種類があります。次の3つの時代に区分し、それぞれの特徴を見てみましょう。

江戸時代

江戸幕府は大名に「国絵図」の作成を命じました。さらに江戸では、江戸全域を一枚に描いた「江戸大絵図」や、一部分に区切って描いた「江戸切絵図」など、他の地域よりも多く地図が作られました。

▼ 江戸切絵図 日本橋北神田浜町絵図(1849-1862)

江戸切絵図 日本橋北神田浜町絵図(1849-1862)

出典:国立国会図書館ウェブサイト「国立国会図書館デジタルコレクション」

明治時代~大正時代

明治時代に入ると、現在の地図の元となる「迅速図(迅速測図)」「仮製図(仮製地形図)」の作成が始まりました。緯度や経度は記されておらず、地図としての精度は低いですが、歴史的に大変貴重な資料です。

▼ 明治期迅速測図

明治期迅速測図

出典:農研機構農業環境変動研究センター

昭和時代

昭和時代に入ると、河川や道路、線路といった交通網やインフラが整備され、都市計画の様子が見えるようになり、普段見慣れている地図とほぼ変わらない形になります。5万分の1地形図の全国整備が1924年におおむね完了し、日本の地図作成の基本的な縮尺(基本図)が出来上がりました。

▼ 今昔マップ関東1928~1945年

今昔マップ関東1928~1945年

時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」(C)谷 謙二2013-:この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の5万分1地形図、2万5千分1地形図及び2万分1正式図を複製したものである。(承認番号 平27情複、第1088号)

※明治期迅速測図と今昔マップ関東1928~1945年は、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」(C)谷 謙二により作成したものです。

セクション02

古地図はどこで手に入る?

古地図はWebサイトやスマートフォンのアプリなどで、手軽に閲覧・入手できます。簡単に使えるおすすめのWebサイト・アプリをご紹介します。

Webサイト

地図・空中写真・地理調査(国土地理院)

国土地理院のホームページでは、これまで国土地理院が測量・調査した地図や空中写真を見ることができます。なかでも、「地理院地図」は、現在と昔の「空中写真」を2画面に並べて比較できるため、街がどのような変化を遂げてきたのかが一目瞭然です。

地図・空中写真・地理調査(国土地理院)

古地図コレクション(国土地理院)

国土地理院が運営するWebサイトで、伊能忠敬が描いた「伊能図」をはじめ、「江戸切絵図」や「迅速図」など、様々な古地図の画像を見ることができます。現在の地図と比較はできませんが、歴史的な資料の数々は必見。天文図やアジア図といった珍しい古地図もあります。

古地図コレクション(国土地理院)

今昔マップ on the web

埼玉大学教育学部 谷謙二教授により作成されたWebサイトです。国土地理院の5万分の1地形図、2万5千分の1地形図、2万分の1正式図をもとに作られており、「地形図」や「空中写真」を2画面・4画面に並べて比較できます。あらかじめ地域や年代ごとに比較できるようデータがセットされているため、切り替えも簡単に行えることが特徴です。

今昔マップ on the web
アプリ
古地図散歩

古地図散歩

合同会社四時舎が提供するスマートフォン用アプリです。通常の地図や航空写真に、明治初期以降の古地図を重ねて見ることができます。バーを操作して透過度を変更できるため、現在と昔の違いを一枚の地図上で気軽に確認できます。ボタンが少ないため、直感的に操作できることもポイントです。

App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
大江戸今昔めぐり

大江戸今昔めぐり

BeMap,Inc.が提供するスマートフォン用アプリでは、江戸切絵図の鮮やかさをそのままに、家紋や表門の向きなど、当時の地図が完全描き起こしで再現されています。バーを操作して「江戸」から「現代」を行き来できるため、まるでタイムスリップしたような地図の旅を楽しめます。

App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
セクション03

古地図ウォーキングを始めよう!

古地図の入手・閲覧方法が分かったところで、早速、古地図ウォーキングに出かけましょう。古地図ウォーキングは、その名の通り古地図を持ってウォーキングに出かけること。今と昔の姿を比べると街の歴史や地形に詳しくなり、歩く楽しみが増えます。地図で気になる場所に足をのばしてみるなど、行動範囲も広がります。

古地図ウォーキングの楽しみ方

古地図ウォーキングには明確なルールはありませんが、目的があるとより楽しみが広がるはず。次のような歩き方を試してみてはいかがでしょうか?

コースを決めて歩く

古地図を見て、江戸時代から残っている通りや川沿いを探し、実際に自分の足で歩いてみましょう。東京都などではウォーキングマップを配布しているので、そのコースと古地図を照らし合わせて歩いてみても良いかもしれません。

コースを決めて歩く
史跡や歴史的建造物に立ち寄る

ウォーキングの途中に史跡や歴史的建造物があれば、積極的に立ち寄ってみましょう。古地図を広げると、実は江戸時代から残る建物だったなんてことも。今もなお存在感を放つ史跡や歴史的建造物を見れば、その土地の歴史をより実感できるはずです。

標識や看板を探し、写真に収める

普段何気なく通っている坂や公園などには、その歴史を記した標識や看板が立てられていることがあります。大きな建物や城跡、史跡のみならず、身近な「道」にも目を向け、写真に収めてみましょう。その場所と古地図を比較すると、意外な歴史が見えてくるかも……?

標識や看板を探し、写真に収める
古地図ウォーキングアルバムを作る

歩数や距離だけでなく、コースや撮影した写真とあわせて記録し、「古地図ウォーキングアルバム」を作成してみてもGood。後で見返したとき、思い出とともに街の歴史や知識がよみがえるはずです。

古地図ウォーキングは、歴史を学ぶ・感じることがメインのため、地図が読めない・苦手な方でも楽しめる歩き方。様々なコースを巡れば次第に地図にも強くなれるはず。古地図ウォーキングで街の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか?

豆知識
消える、生まれる、変わっていく地図記号

地図に欠かすことのできない地図記号ですが、地図記号は時代に合わせて変わっているのをご存知ですか?

消える、生まれる、変わっていく地図記号

例えば、2万5千分1地形図で使われなくなった地図記号は、銀行や都道府県庁などです。ただし、銀行は1万分1地形図、都道府県庁は20万分1地勢図などでは今も使われています。

この他に古戦場や塩田などの記号も使われなくなりました。
また、新しく生まれた地図記号もあります。老人ホームや博物館、図書館などです。

老人ホームの記号は平成18年に、博物館と図書館は平成14年に新しく生まれました。時代によって変わる地図記号ですが、郵便局や温泉など形が変わった記号もあります。昔の地図と見比べて、その変化を探してみてはいかがでしょうか。

出典:国土交通省国土地理院キッズページ「小学3年・4年 地図記号」より

2021年12月公開

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