すこやかコラム 第32回
俳句を詠みながらウォーキング!「吟行」のすゝめ
一人でも楽しめる趣味として、近年、人気を高めているのが「俳句」です。俳句は難しいというイメージがありますが、TV番組などの影響もあり気軽に楽しむ人が増えてきています。
俳句には、自然の中を歩きながら、季節の移ろいを感じ、心に響いた景色を詠む「吟行(ぎんこう)」という楽しみ方があります。今回は、そんな吟行のやり方や俳句の作り方などをご紹介します。
※新型コロナウイルス感染防止のために必要なことや、周囲の人への配慮いただきたい点を踏まえた上で、安全・安心にウォーキングに取り組んでください。
新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点と、運動事例について(スポーツ庁)
ウォーキングの新たな視点。「吟行」ってなに?
吟行とは、詩歌や俳句などの題材を見つけに公園や神社などへ出掛けたり、作りながら歩いたりすることです。近くの川沿いや大きな緑地、史跡などを歩きながら、季節の動植物や空模様などに目を向けて題材を集め句作する、俳句の楽しみ方の一つです。
俳句は家の中でじっくり考えながら詠むというイメージがありますが、外へ出て四季の移ろいを感じることで深みが生まれ、思いがより伝わりやすくなります。
普段のウォーキングに吟行の意識を加え、「俳句を作る」という視点で見慣れた道や初めて訪れる街を歩くと、様々な発見があるかもしれません。
ウォーキングしながらできる「吟行」の楽しみ方
もちろんいつものウォーキングのように手ぶらでも吟行はできますが、より充実させるために、これらのものを持っていると便利です。
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一般的な吟行ではあまり写真撮影はしませんが、景色や動植物などウォーキングしながらふと気になったものを撮影し、後で見返すと便利です。スマートフォンのカメラ機能でもOK。
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思い付いた句やキーワードを書き留めます。スマートフォンのメモ帳機能やボイスメモ機能を使ってもよいでしょう。
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カメラ機能だけでなく、マップによる道の確認や、花や木の名前を調べたいときに使用します。
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俳句の核となる季語を調べます。行事や自然現象も季語になっているので、歳時記から季語を選んで同じ風景を探してもいいでしょう。携行に便利な文庫本サイズのものもあります。
「きごさい歳時記(https://kigosai.sub.jp/001/)」などのウェブサイトでも季語を調べることができます。
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※カメラやスマートフォンを使って撮影、または調べ物などをする際は、周囲の人に配慮し、立ち止まって使用しましょう。
- ● その場で俳句を完成させる必要はありません。俳句の「題材」を集める意識で、深く考えずに心が動いたことを記録・記憶しましょう。
- ● 一点に集中して細かく見るだけでなく、広い視野で全体を見てみましょう。
- ● 下にある写真のように、周囲の動植物や空、川などの景色を見て、イメージをふくらませてみましょう。
意識を向けたいポイントの具体例
- 空
晴れ、雨、色、日差し、雲の形、飛行物(飛行機や鳥) - 植物
木や花、草などの植物の名前、色や形 - 水辺
川や池の水面の様子、魚や水生生物、透明度 - 人
家族や子どもの様子、服装、何をしているか - 目に見えないもの
気温・温度、匂い、感触、音、心情、歴史、時間
俳句は、何を感じたか、どんなことに驚いたのかという心の動きに気づくことが最も大切です。吟行の際は周りの景色に目を向けるだけでなく、自分自身の心の変化にも意識を向けてみましょう。
そもそも俳句ってどう作るの?
難しいと思われがちな俳句ですが、作る際の基本的なルールはたった3つだけです。ルールを守り、自分が感じたことを詠んでみましょう。
5・7・5の17音(拍)で構成する
俳句は、5・7・5の17音(拍)が定型になります。ここで注意したいのが「17文字」ではなく、詠んだ時の音が「17音」になるということ。次の音が入る場合には注意が必要です。
- 「蝶(ちょう)」「半夏生(はんげしょう)」など小さい文字が入る音は、「ちょ」「しょ」と2つの文字を一緒に発音するため、1音となる。
- 「薄荷(はっか)」「ライラック」など小さい「っ」が入る音は、それぞれを1音とする。
- 「サイダー」「カーネーション」など伸ばし棒「ー」が入る音は、それぞれを1音とする。
また、伝えたいテーマや情景を強調するために、「字余り(定型より音が多い)」や「字足らず(定型より音が少ない)」を使う場合もあるので、作句に慣れてきたら挑戦してもいいかもしれません。
「切れ」を使う
「切れ」とは、言葉の意味や句の内容、リズムの“切れ目”のことです。間(ま)を作る、または言い切って強弱をつけることで、余韻や感動・詠嘆を表現できます。
切れをはっきりと、強い表現で伝える助詞・助動詞が「切れ字」です。現在の俳句に使われるのは「や」「かな」「けり」の3種類です。
切れには強弱があり、体言(名詞)<連体形<連用形<終止形・命令形<切れ字「や」<切れ字「かな」<切れ字「けり」の順で強くなります。一句の中で複数の切れの強さがぶつからないように離すのが基本です。
「季語」を1つ入れる
季語とは、その季節を表す俳句の核となる言葉です。主に歳時記にまとめられていて、俳句だけでなく連歌や時候の挨拶などにも使われます。
季語は「春・夏・秋・冬・新年」の5つの季節に分けられ、それぞれに「時候」や「天文」「地理」「行事」「生活」「動物」「植物」といったいくつかの項目があります。
基本的に、季語は俳句の中に1つだけです。種類によっては季語を入れない「無季俳句」や、2つ以上の季語がぶつかってしまう「季重なり」等もありますが、まずは気にせずに自由な発想で詠むことが大事です。
俳句の作り方がわかったところで、有名な俳人が詠んだ晩秋から冬の俳句を見てみましょう。
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- 季語は「柿」で晩秋、「法隆寺」に拗音が入っており、17音が守られています。どこか温かみを感じる正岡子規の代表的な俳句です。
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- 季語は「初時雨」で初冬、17音が守られています。初冬の寒い時期に、時雨に濡れて震える猿の様子を詠んだ松尾芭蕉らしい俳句です。
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- 季語は「冬木立」で冬、香は「か」と読み、17音が守られています。「おどろく」という言葉で与謝蕪村の感情を直接表した、情景が浮かぶような俳句です。
俳句は四季を表現できる日本ならではの「詩」。知識や教養が付くだけでなく、考えることは頭の体操になります。吟行で体も動かせば、心身ともに健康を目指せるはず。外に出るのが億劫な寒い日や暑い日、用がなくて行かなかった街でも、題材集めのためなら足をのばせそうです。ウォーキングの楽しみ方の一つとして、歩きながら心に残った景色や思いを俳句にしてみてはいかがでしょうか。
[監修]関根千方(俳人、古志同人)
「俳句を作ってみたいけど、上手に作れるか心配」という方のために、俳句を作る「コツ」をいくつか紹介します。
【その1】テーマを決め、一番伝えたいことを入れる
俳句では、テーマとなる「俳句の中心」を決めることが大切です。原則として、一つの俳句につき、俳句の中心は一つだけ。あれもこれもとせず、読者に感じてほしい、伝えたいことを中心に据えるようにしましょう。
【その2】季語の説明にならないようにする
季語はそれだけで意味を持つ言葉です。そのため、季語があれば何を表すか十分に伝わります。歳時記にあるような季語の解説を俳句に書かないよう注意しましょう。
【その3】句会や俳句コンクールなどに参加する
上手な俳句に触れることは、自分のスキル向上になります。句会や俳句コンクールなどは定期的に開催されています。
そして、何よりたくさん俳句を詠むことが上達のコツです。出来不出来にこだわらず、目に見えたもの、肌で感じたことを作句する習慣を身につけていきましょう!
2021年11月公開