すこやかコラム 第31回

すこやかコラム 第31回
今だからこそ身につけたい!運動を習慣化するためのポイント

今だからこそ身につけたい!運動を習慣化するためのポイント

テレワークなどの新しい生活様式の普及によって「身体活動や運動量の減少および座位時間の増加」が著しい昨今。この状況の継続は体力や免疫力を低下させます。おうち時間が増えた今だからこそ、運動習慣を身につけることが大切です。

今回は、2021年7月に開催された、かんぽ生命主催のイベントにご登壇いただいた熊谷秋三博士の講演から、運動習慣の重要性と運動継続のためのポイントを紹介します。

九州大学名誉教授 熊谷秋三 博士による講演の様子
セクション01

体力を向上させ、健康リスクを下げる運動習慣

私たちの体力・運動能力(ここでは握力や歩行速度、持久力などの総称を指します)は、日常の身体活動の種類や強度によって決定されます。
身体活動には大きく分けて「中・高強度身体活動(MVPA)」「軽強度身体活動(LPA)」に加え「座位行動(SB)」の3種類があり、特にMVPAの実施は健康に良い影響をもたらします。

熊谷先生によると、身体活動および座位行動の客観的・主観的評価に基づく研究成果として、以下の図にあるような影響・効果がわかっています。

体力を向上させ、健康リスクを下げる運動習慣 体力を向上させ、健康リスクを下げる運動習慣

つまり、座りっぱなしなどの動きが少ない生活が長く続くと体力が低下し、腰痛や関節痛、高血圧症や循環器系疾患といった健康リスクが増加します。一方、適切な身体活動は体力の改善を通して身体だけでなくメンタルヘルスのリスクも抑え、健康的な生活の維持や改善に貢献しています。よって、体力向上のためには、座位時間を減らし、かつ軽強度以上の身体活動および運動習慣をつけることが大切です。

セクション02

運動習慣を身につけるために大切なことは?

厚生労働省による“運動習慣のある者”の定義を「1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者」としています。
しかし定期的な運動を1年以上続けることは、簡単ではありません。それでは、どうすれば運動習慣が身につくのでしょうか。

勤労者を対象とした研究※では、運動を継続する理由として以下の5つの要因が指摘されています。

  • 楽しさ・高揚感:
    運動が楽しい、達成感がある
  • 依存・自尊:
    他人から尊敬されたい、多くの人がやっている
  • 外観・陶酔:
    運動している姿が「かっこいい」「素敵」と思う・思われたい
  • 健康利益:
    体力・体型を維持・改善したい、病気の予防のため
  • 飲食的充足:
    運動した後の食事や一杯(お酒やジュース)が美味しい

運動を続けられる人は、体力の維持や病気の予防といった認知だけでなく、運動そのものに楽しさや高揚感を感じているようです。また、自己に適したより効果的な目標設定をするなど、健康への意識が高いこともわかっています。

目標設定の管理や記録(みえる化)のために、健康応援アプリ「すこやかんぽ」などのツールを活用することも非常に有効です。また家族や友人、仲間と一緒に目標に向けて運動することも、運動継続要因の一つになっています。

※出典:「運動継続者に見られる継続理由の特色―労働者における運動継続への行動変容アプローチに関する研究―」(日本健康教育学会誌 第27巻 第3号 2019年)

セクション03

ウォーキングで得られる効果を認識し、変化を楽しもう!

運動を習慣化させるためには、運動によって得られるプラスの変化や続けられる自信を持つことも大切です。激しい運動は目標設定が難しく運動能力の差が出やすいので、手軽に実施できるウォーキングやジョギングから始めてみましょう。

ウォーキングには次のような効果が期待できます。

  • 体脂肪(内臓脂肪含む)の減少
  • 善玉コレステロールの上昇
  • 高血糖の改善
  • 最大酸素摂取量の増加
  • 高血圧の改善
  • 心のリフレッシュ・ストレス耐性の増大

健康運動指導士養成講習会テキストより

また、ウォーキングの際には「+10(プラステン)」を実践してみましょう。「+10」とは、厚生労働省が「健康づくりの身体活動基準2013※」で定めた基準を達成するために提唱した、「今より10分多く、からだを動かそう」というメッセージです。

公園を抜けて遠回りする、いつもは使わない階段を登り降りする、バスを一駅前で降車し歩くなど、いつもより10分多く歩くように工夫してみましょう。

ウォーキングで得られる効果を認識し、変化を楽しもう!

※健康づくりの身体活動基準2013:厚生労働省の健康づくり運動「健康日本21《第2次》」において定められた、2023年までの身体活動・運動分野の目標を達成するためのツールとして同省健康局から発表されたもの

日々の運動を「何のためにやっているか」「何がどう効いているのか」が明確になれば、それ自体が運動継続要因になります。また体調や体型に目に見える変化が現れれば、やりがいや自信につながることでしょう。

テレワークなどの新しい生活様式の普及により、子どもから高齢者まで多くの人が身体を動かす機会が減り、自宅でテレビを見る、パソコンで仕事をするなど、座ったままの行動が増加しています。

そうしたおうち時間が増えている今だからこそ、ソーシャルディスタンスやマスク着用の徹底など感染対策をしっかり行った上で、戸外でのウォーキングなどの運動を習慣づけ、日々続けることが、健康的な身体づくりに効果的なのではないでしょうか。

豆知識
普段の生活でもできる3.0メッツ以上の生活活動

文中でも説明していますが、METs(メッツ)は、運動強度の単位で、安静時を1とした時と比較し、何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示しています。

「中・高強度身体活動(MVPA)」に当たる運動はジョギング(7.0メッツ)や山登り(6.5メッツ)などの他にゴルフ(3.5メッツ)やスキー(7.0メッツ)などがありますが、普段の生活の中でも、3.0メッツ以上に相当する活動がたくさんあります。

普段の生活でもできる3.0メッツ以上の生活活動 普段の生活でもできる3.0メッツ以上の生活活動

座りっぱなしの状態が続かないように、家事や水やりなど普段の生活の中でも意識的に動きましょう。また、体調を見ながら無理のない範囲で、中・高強度身体活動となる3.0メッツ以上の生活活動や運動が習慣づくように心がけましょう。

出典:厚生労働省「健康づくりの身体活動基準2013」生活活動のメッツ表

2021年10月公開

すこやかコラム一覧ページへ