すこやかコラム 第15回

すこやかコラム 第15回
血糖値が正常でもリスクあり!? はじめよう、血糖値スパイクの予防策

血糖値が正常でもリスクあり!?
はじめよう、血糖値スパイクの予防策

「血糖値スパイク」とは食後の短時間に急激に血糖値が上がる食後過血糖のことです。一般的な健康診断では見逃されやすいため、「隠れ糖尿病」とも呼ばれます。命に係わる重大な病気を引き起こす可能性がある血糖値の上昇。どのように対処すればよいのでしょう?

セクション01

もしかしてあなたも「血糖値スパイク」かも!?

もしかしてあなたも「血糖値スパイク」かも!?

慢性的に血糖値が高い状態が続く人は糖尿病ですが、血糖値スパイクは食後だけ血糖値が急上昇してすぐに急降下します。食後に毎回眠気を感じたり、疲労感が続いて元気がなかったりする人は、血糖値スパイクの可能性が考えられます。放置すれば動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、がん、認知症のリスクを高めることも。

九州大学が福岡県久山町と共同で健康調査を実施したところ、40代以上の住民8,000人の約2割にあたる住民が血糖値スパイクであるという結果が出ました。このデータを全国に当てはめて考えると、日本全体で血糖値スパイクのある人は推定で1,400万人以上いることになります。

特に、高血圧や高血糖、脂質異常がある人が血糖値スパイクになりやすく、運動不足や喫煙、偏食が多い男性は女性よりも血糖値スパイクのリスクが高いというデータもあります。
しかし、肥満体型のみならず痩せ型の人でも血糖値スパイクになる可能性は否定できません。さらに、中高年だけの問題ではなく成人の5人に1人が糖尿病予備軍と呼ばれ、20~30代も血糖値の異常は気にしたほうがよいと言われています。

血糖値スパイクのリスクは男性の方が高い

では、血糖値スパイクの人はどのような異常値を示すのでしょうか?血糖値が正常の人、糖尿病患者、血糖値スパイクの人の血糖値の変動を比較したグラフを見てみましょう。
糖尿病を患っている人は慢性的に血糖値が高いため、健康診断でも異常が突き止められますが、血糖値スパイクの人は食後に血糖値が急激に上昇し1~2時間ほどで定常の状態に戻ります。空腹時で採血を行う健康診断では発見しにくいだけでなく、自覚症状もないので自分が血糖値スパイクかどうかの判断がつきにくいのです。

血糖値変動グラフ

血糖値スパイクを予防するポイントは、糖質の吸収を穏やかにすることです。そのために普段の生活で「食事方法の改善」「運動による体重コントロール」を心がけましょう。

セクション02

今日からはじめたい食事方法

今日からはじめたい食事方法

食後血糖値は140mg/dLを超えないことが推奨されていますが、一般にはなかなか血糖値は測れないもの。誰でも実践できる血糖値スパイクの予防策として、まずは毎日の食事方法を見直しましょう。糖の吸収を抑えて、血糖値を急上昇させないポイントをご紹介します。

血糖値を急上昇させない食事方法

食べる順番は野菜から

  • 食べる順番は、野菜→肉・魚→ご飯を心がけましょう。食物繊維が豊富な野菜(ごぼう、セロリ、さつまいも、青菜類など)を多く摂ることで、糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の過剰な上昇を防ぎます。

1日3食をしっかり食べる

  • 不規則な食生活は食後高血糖を招きます。朝食を抜いてからランチを摂ると、朝食をしっかり食べたときと比べ血糖値が急激に上昇。1日3食を規則正しく食べることで血糖値スパイクを防ぎましょう。

よく噛んで食べる

  • 噛む回数が多いと、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。噛む回数が40回の人と40回以下の人では、40回噛むほうが食後2時間の血糖値が低くなるという実験データがあります。特に朝食で噛む回数を増やすことが最も効果的。最低でも30回は噛むようにしましょう。
セクション 03

運動の継続も効果的

運動の継続も効果的

血糖値スパイクのリスクが最も高いのが、運動不足の人。食後の運動は血液中のブドウ糖が筋肉で大量に消費され、血糖値を下げる効果があります。食べたら1時間以内に運動を行うのが効果的で、15分程度の運動で糖の吸収が和らぎ、高血糖を抑えます。特にウォーキングやジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。ソーシャルディスタンスを十分にとってランチ後15分ほど散歩してみてはいかがでしょうか。

高血糖防止には継続的に運動を続けることが大切ですが、筋トレによって筋肉量を増やせば、それだけ糖を消費しやすい体になります。「体重の増加が気になってきた」「筋肉量が落ちてきた」と感じる人は、ウォーキングとともに筋トレを取り入れることをおすすめします。

男女や肥満・痩せ型など関係なく、誰にでも起こりうる血糖値スパイク。
予防策としては、食事方法に気をつけることと食後の運動を続けること。血糖値の上昇が気になる人は、糖尿病内科や糖尿病外来などで検査と治療ができるので、相談してみましょう。

豆知識
15分ウォーキングは何歩分?糖質制限は効果的?

食後の15分ウォーキングはだいたい何歩でしょうか?
一般的に成人の歩く平均速度は時速約4km程度、歩幅は70cm程度と言われています。そこから1時間(4km)歩いた場合を計算してみましょう。

  • 1時間あたりの歩く距離:4km=4,000m=400,000cm
  • 1時間あたりの歩数:400,000cm÷70cm=約5,700歩

1時間に約5,700歩歩くことになりますので、ランチ後の15分間の散歩でだいたい1,400歩歩くことになります。

個人によって上下はありますので、自分の歩数はかんぽ生命の健康応援アプリ「すこやかんぽ」で確認してみましょう。15分の歩数を確認することで、目標歩数を到達するためにどのくらいの時間ウォーキングすればよいのかの目安にもなります。
ウォーキングもより効果を高めるためのコツもあります。こちらを参考にしてみてください。
運動のほかにも、最近はダイエット目的だけではなく、血糖値の上昇を抑える目的でもご飯や麺類を控え、たんぱく質を多めに摂る「糖質制限」を取り入れている人もいます。しかし、食事制限でしっかり食べないために、すぐにお腹がすいておやつを食べてしまうことも多いのではないでしょうか。

実は、糖尿病を気にする人が控えたほうがよいのは、たくさんの糖が結合しているご飯などではなく、砂糖のような単純糖質です。複合糖質は消化に時間がかかるため、血糖値の上がり方がゆるやかですが、単純糖質はすぐに消化吸収されるため、食後すぐに血糖値が上がり、なかなか下がりません。

また、自己流の糖質制限では、さらに血糖値が悪化してしまう場合もあります。

コラムでご紹介したように食べる順番を心がけつつ、バランスのよい食事を摂るようにしましょう。毎日の食事と運動が、健康への一番の近道です。

2020年5月公開

出典:
「血糖値スパイク」健康診断では見落としがちな血糖値の異常(せいてつLab/社会医療法人製鉄記念八幡病院)
“血糖値スパイク”が危ない(NHKスペシャル)
高血糖の新常識「血糖値スパイク」(医療法人社団光史会銀座泰江内科クリニック)
BMIと適正体重(keisan/カシオ計算機株式会社)
グルコーススパイクについて【ビジネスパーソンこそ間食に気をつけるべき】(しんクリニック)
「血糖値は大丈夫」な人も要注意。“血糖値スパイク”のリスクと対処法(shiRUto -シルト-/立命館大学)
・糖尿病における食後血糖値の管理に関するガイドライン2011 (IDF)(株式会社三和科学研究所)
「よく噛んで食事をする」と食後の血糖上昇を抑えられる 「よく噛む」食事法は朝と夜で効果に差が(保健指導リソースガイド)
1時間歩くと何歩?距離は何キロ(何km)?1時間半や2時間ではどのくらい?(ウルトラフリーダム)
【糖質制限のデメリット】痩せない・血糖値が下がらない原因は間食 対策はバランス食(特選街web)

すこやかコラム一覧ページへ