皆さんは「肥満症」について、どのぐらいご存知でしょうか?
肥満は病気ではなく、食事や運動不足など、不規則な生活習慣によって脂肪が体に蓄積された状態をいいます。今現在、肥満を予防する生活習慣がどのぐらいできているか、4つのポイントをチェックしてみましょう!
「ぽっちゃりしているくらいの方が健康的に見える!」という方もいますが、いわゆる「肥満」は健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。とはいえ、ダイエットをしても運動をしても痩せない・・・という声もよく耳にします。では、太り過ぎを解消するには、どのような方法が効果的なのでしょうか?
肥満解消は「今の自分の体の状態」を知ることが大切です。まずは肥満の判定基準を知ることから始めてみましょう。
判定の基準として一般的に使われているのがBMI(体格指数)です。BMIは、体重と身長から肥満度を算出します。
計算式は「BMI=体重(kg)÷身長(m)²」で、その値が25以上の場合に「肥満」と判定されます。こうした肥満の判定基準は国によっても異なりますが、算出方法は世界共通。「最近、ちょっと太ったな」と感じたら確認をしてみましょう。
さて、ここでBMIを減らすためにできることを考えてみましょう。まず取り組むべきは、生活習慣の見直しです。特に運動と食事を日々の暮らしにバランスよく取り入れることが大切。一番身近で手軽にできる方法はあるのでしょうか?
例えば運動の場合、BMIを下げるための運動のキーワードは「有酸素運動」です。毎日の習慣としてはじめるならば、散歩感覚ではじめられる軽いウォーキングが効果的です。通勤時に一駅前で降りて歩いたり、自転車を使った買い物を徒歩にしたりなど、ちょっとした行動が実は有酸素運動だったりします。
ウォーキングの重要性は統計データからもあきらかで、1日の目標歩数を達成していない人は、達成している人に比べてBMIが異常値である割合が1.23倍高いことが分かりました。
運動 × BMI
スマホの健康アプリや歩数計など、便利なツールが増えている昨今。活用してみると、意外と歩いていないことが分かるかもしれません。まずは日々の生活の中から歩数を意識していきましょう。
一方、食事はどうでしょうか?思い立ったが吉日とばかりに食事のメニューをガラリと変えるのは難しいという方も多いと思います。そこで注目したいのは「食事にかける時間」。さらに「食べ物を噛む回数(咀嚼回数/そしゃくかいすう)」を意識することです。
噛む回数が少ない、いわゆる「早食い」が続くことで、消化器官には負担がかかり、栄養不足に。加えて食べ過ぎや肥満のリスクがとても高くなります。記憶力や学習能力にも影響することもあるなど、さまざまな健康上の問題を引き起こすきっかけになる可能性があるのです。
早食いの怖いところは、脳が満腹だと感じるまで、とにかく食べ過ぎてしまう(過食)こと。私たちは食べることでもエネルギーを消費していますが、早食いが習慣になるとその消費量が少なくなり、逆に肥満度が高くなるという悪循環が生まれます。
「たかが早食いでしょ?」と侮っていると危険!なんと、人と比べて「食べる速度が速い」人は「食べる速度が遅い」人に比べて、BMIが異常値である割合が1.25倍高いことが分かりました。
早食い × BMI
体重を減らすなら、日々の食生活で糖分や脂質の多い食品を控えて、食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、穀物)を積極的に食べて満腹感をしっかり得ることも大切です。全部を一度に変えようと無理をせず、まずは「食事にかける時間に余裕を持ち、早食いを避けること」から始めてみませんか?
「よく噛む」ことを心掛けていると、食材そのものの美味しさを発見することもできて、健康的に毎日の食事を楽しめるようになるでしょう。
BMIを下げなければならない一番の理由は、肥満が引き寄せる病気を未然に防ぐこと。ところが、BMIは低すぎても問題があるのです。BMIの数値を大きく3つに括り、それぞれのBMI値で取り組むべきことや目安になるポイントを少しご紹介します。
肥満症の定義はBMI≧25です。その中で、ホルモンの病気や遺伝による肥満を除いて、25≦BMI<35までが肥満もしくは肥満症、BMI≧35になると高度肥満もしくは高度肥満症と分かれます。
逆にBMI<18.5になると、痩せ(低体重)の範囲に。これも注意が必要です。
現体重の5~10%の減量目標を設定しましょう。
1日の摂取エネルギーは20~25kcal/kg×標準体重以下として、食事による減量を優先し、ウォーキングなど軽めな運動を選択しましょう。無理は禁物です。
現体重の3%以上の減量目標を設定しましょう。
1日の摂取エネルギーは25kcal/kg×標準体重以下として有酸素運動はもちろん筋力トレーニングなども含めた運動を積極的に取り入れましょう。
減量にはこだわらず、筋肉量が落ちないように注意しましょう。
1日の摂取エネルギーは30~35kcal/kg×標準体重程度として適度な運動で筋力を維持しましょう。偏食の方も多いため、栄養バランスの良い食事をすることが重要です。タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取しましょう。
高くても、低くても問題が起きるBMI。特に基準値を超えていることが分かった場合は、日々の「摂取カロリーと消費カロリー」の見直しが必要です。これらが同じでは、どんなに頑張っても体重が減ることも、またBMIを下げる体内の組織なども変化することはありません。肥満解消にとって一番重要なのは「カロリーコントロール」です。飲酒も含む毎日の食事による摂取カロリーを減らし、同時に日頃の運動によって消費カロリーを増やすことを行うことで効果が得られます。
よく「食べなければカロリーも体重も減らせる」という方もいますが、これは大間違い!逆に筋肉が落ちて太りやすい体質に・・・。運動と食事のバランスを保つことが、肥満解消への近道です。
どんな病気や症状でも、密接に関わってくる運動や食事。これらの生活習慣を改善するには日々の積み重ねが大切です。
【参考文献】
【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)
1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
【ホームページ】
福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/
2025.2.28 作成